こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。
6月中旬から7月前半は、個人医院の院長さんにとって「支出が重なる時期」です。
具体的には、こんな支出が立て続けにやってきます。
- 夏の賞与支給(社保含む)
- 住民税の第1期納税(6月末)
- 源泉所得税の納期特例による上半期分の納税(7月10日)
ひとつひとつは大したことがないかもしれません。でも、これが2〜3週間のあいだに集中するとなると、話は変わってきます。
今回は、この時期の資金繰りをどう見ておけばいいか、僕なりの考え方をお伝えします。
なぜこの時期に注意が必要なのか
普段の資金繰りは、ある程度パターン化されています。
保険診療の入金は20日辺り、カード決済の売上も毎月決まった日に入ってきて、それらと人件費や家賃、リース料、材料費、返済などの出ていくお金とのバランスで、月の収支が決まります。
つまり、おおよそ決まっています。この「いつもの流れ」が頭に入っていれば、月の途中で残高が一時的に減っても、もう少しすれば入金があると落ち着いて構えられます。
問題は、この「いつもの流れ」に、非経常的な支出が乗っかってくるときです。
6月中旬から7月前半は、まさにそのタイミングです。
賞与、住民税、源泉所得税の納期特例。
どれも金額が大きく、しかも支払う時期がほぼ決まっています。
経常的な支出に、これらが上乗せされると、思った以上に口座の残高が削られていることにあとから気づくことになります。
6月に資金繰りに悩まないための対策
その1:いつものお金の流れを可視化する
まず大切なのはいきなり大きな支出だけを見ないことです。
「賞与でいくら出る」「納税でいくら出る」と、特別な支出だけを単発で眺めても、本当に資金が足りるのかどうかは判断できません。あくまで通常の出入りがあったうえに、これらが乗ってくるからです。
順番としては、まず通常の資金繰りの傾向をつかむことです。
そのうえで、非経常的な支出を重ねて見る順番を守りましょう。
通常の傾向をつかむには、月を「上旬・中旬・下旬」の3つに分けて、入金と出金がそれぞれどのタイミングで動いているかを整理してみてください。
月全体で考えても月中の預金残高の変動が把握しづらいので。
たとえば、こんな具合です。
上旬
- カード決済売上の入金
- リース料等の引き落とし
- 借入返済の引き落とし(1行目)
現金決済が中心であれば、入ってくるお金は少なく、出ていくお金が先行しやすい時期です。
中旬(診療報酬の入金まで)
- 借入返済の引き落とし(2行目)
- 社会保険診療報酬(国保連・社保支払基金)の入金
- 細かい経費の支払い
月の中旬は、診療報酬の入金前は資金残高がもっとも薄くなる可能性が高い時期でもあります。
そのため、それ以外の期間と比較して経費の支払いが集中しないようにしている医院もあります。
下旬
- 給与の支払い
- 歯科医師会の会費、歯科医師国保の保険料
- カード決済経費の出金
- 外注技工料の支払い
- 生活用口座への送金
月末に向けて、再び出ていくお金が増えていきます。給与は医院にとって最も大きな固定費のひとつですから、下旬の残高はここで大きく動きます。
こうして3つに分けて眺めると、「いつ口座残高が薄くなって、いつ厚くなるのか」というリズムが見えてきます。このリズムをつかんでおくことが、資金繰りを見るうえでの土台になります。
逆に言えば、この土台がないまま大きな支出だけを心配しても、見通しは立ちません。
その2:非経常的な支出を重ねてみる
通常の流れがつかめたら、次にこの時期特有の支出を重ねます。
顧問税理士がいる場合は、これから列挙する支出がいくらぐらいになりそうか、事前に相談をしておくことをおすすめします。
夏の賞与
スタッフさんへの賞与は、金額も大きく、支給日も決まっています。
月給の何倍かがまとめて出ていくわけですから、当然インパクトは大きいです。
さらに見落としがちなのが、賞与にも社会保険料がかかるという点です。本人負担分と医院負担分の両方を、翌月の社会保険料の納付で精算することになります。
つまり、賞与を支給した月だけでなく、その翌月の納付額まで膨らむということです。賞与そのものだけでなく、それに連動する社会保険料の増加分まで見ておく必要があります。
住民税の第1期納税
個人事業主の住民税は、6月・8月・10月・翌1月の年4回に分けて納めるのが原則です。その第1期分が、6月末にやってきます。
勤務医時代は、毎月の給与から年間税額が12等分された金額が天引きされていましたが、個人事業主になると4回分割払いなうえに、自分で納付するルールになります。
しかも前年の所得をもとに計算されているので、所得が大きかった年の翌年は、その分だけ負担も重くなります。
特に勤務医時代にそれなりの給料をいただいていた場合は、高い住民税を開業当初の手元資金の余裕がない時期に払うことになる可能性があります。
源泉所得税の納期特例
スタッフのお給料から預かっている源泉所得税や税理士報酬にかかる源泉所得税も納税しなければいけません。
通常は毎月納税する必要がありますが、納期特例の届出を出している医院では、1月から6月までの半年分を、7月10日にまとめて納めます。
毎月コツコツ納めているわけではないぶん、つい忘れがちですが、半年分が積み上がると、それなりの金額になります。スタッフの人数が多い医院ほど、この金額は大きくなります。
資金繰り対策の効果
納税の予測ができると、打てる手が増えます。
たとえば、大きな設備投資の支払いを、この時期にぶつけない。
新しいユニットの導入や、まとまった材料の発注、内装の改修といったまとまった支出を、あえてこの山を越えてから動かすという判断をすることができます。
資金繰りで苦しくなるのは、たいてい支出が「予定外」だったときです。逆に言えば、いつ・いくら出ていくかが分かっていれば、その前後で調整ができます。
預金残高を取り崩して備えるにしても、いつまでに動かせば間に合うのか、あらかじめ見当がつきます。慌てて動かすのと、計画的に動かすのとでは、気持ちの余裕も違います。
まずは自院のリズムを知ることから
資金繰りというと、難しく考えてしまう先生が多いのですが、出発点はシンプルです。
自分の医院は、月のどのタイミングでお金が入ってきて、どのタイミングで出ていくのか。まずは、この「いつもの流れ」を一度きちんと把握してみてください。通帳やネットバンキングの明細を、上旬・中旬・下旬に分けて、入金と出金を並べてみるだけでも、見え方は変わってきます。
そのうえで、賞与や住民税、納期特例といった非経常的な支出を重ねていけば、この6月から7月にかけての支出が重なる時期も、慌てずに乗り切ることができます。
お金の流れが見えていれば、経営の意思決定にも余裕が生まれます。まずはご自身の医院のリズムを知ることから、始めてみてください。
最後にひとつだけ補足します。
この時期を一度きちんと整理しておくと、来年以降がぐっと楽になります。
賞与の支給日も、住民税や納期特例の納付日も、毎年ほぼ同じ時期にやってくるからです。今年「ここで支出が重なるんだな」と体感しておけば、来年は前もって準備ができます。資金繰りは、一度リズムをつかんでしまえば、毎年その精度が上がっていくものです。
毎月の試算表や資金繰り表をきちんと見て、入金と出金の流れを把握しておく。地味ですが、これが一番の備えになります。
今年の6月から7月を、その第一歩にしていただければと嬉しいです。


