こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。
専門職の採用ができない
医院や会社の中核を担うスタッフさんが辞めた
こうなると人材不足が起こってしまうので、人件費を上げて待遇を改善することを一案として考えるでしょう。
いっぽうで気になるのは資金繰り。
湯水のようにお金があればいくらでも人件費に回すことができますが現実問題そうではありません。
特に中小企業や個人事業主にとっては、限られたリソースを最大限に活用するために、人件費の予算を適切に設定することが求められます。
人件費の予算をどうやって決めるべきか悩む方も多いでしょう。
本記事では、2つのアプローチを紹介し、各アプローチの特徴やポイントを解説していきます。
人件費の予算を決める2つのアプローチ
①:想定売上から人件費を割り当てるアプローチ
一つ目のアプローチは、売上からどれくらいの割合を人件費に割り当てるかを決める方法です。
ストラック図で表現するとこのようなイメージになります。
このアプローチは、次の場合に適しています。
- 専門職などで、時間あたりの売上が見積もりしやすい場合
- メニューの料金とそれに要する工数が明確な場合
具体的なやり方を数字を使って説明します。
たとえば、歯科医院の場合、歯科衛生士さんなら、1時間のアポイント枠で保険点数◯点が目安ということが分かっていれば、1時間あたりの売上は分かりますよね。
1時間1万円の売上を見込める人材を採用したいと考えた場合、その1万円から経費と残すべき利益を差し引いた金額を、その人材に支払うべき目安時給として設定できます。
このアプローチを用いることで、売上に対する人件費の適正な割合を見積もることができ、利益を確保しつつ効率的に人材を活用することが可能です。
具体的には、次のような手順で計算をします。
- 売上を見積もる: 一定時間内の売上を見込む(時間は一時間や一日や一週間単位でもOK)
- 経費と利益を差し引く: その売上から、原価や経費(設備費や材料費など)と必要な利益を差し引く
- 目安時給を設定: 残った金額がその人材に支払うべき時給(日給や月給)の目安となる
このアプローチのメリットは比較的簡単な方法であることと、損失を生みにくいということです。
売上というパイから経費、利益、人件費を振り分けていくので、振り分けた合計>売上にならない限り、人を雇ってお金がなくなるという心配はありません。
②:人件費の相場から必要な売上を見積もるアプローチ
もう一つのアプローチは、人件費の相場から逆算して必要売上を見積もる方法です。
ストラック図で表すとこのようなイメージになります。
このアプローチは次の場合に適しています。
- 人材獲得競争が激しく、「これくらいの待遇でなければ採用が難しい」という場合
- 高度なスキルや専門知識が求められる職種で、給与水準が市場である程度決まっている場合
特に特定のスキルを持つ人材を確保するための必要な人件費が分かっている場合は、このアプローチのほうがやりやすいかもしれません。
例えば、優れた人材を確保するためには月40万円の予算が必要だと分かっている場合、その人材を雇用するために必要な売上や利益を捻出する戦略を立てるというやり方です。
このアプローチでは、必要な人材の相場を調査し、その上でビジネスの収益モデルを見直すことで、求める人材に見合った待遇を提供することができます。
具体的なステップとしては次の通りです。
- 人件費の相場を調査: 求める人材のスキルや経験に応じて、適切な給与水準を調べる
- 利益を確保するための戦略を立てる: その人件費を支払うために、必要な売上やコスト削減の方法を検討する
- 収益モデルを見直す: 必要に応じて価格設定やメニュー内容を調整し、利益を確保できるようにする
このアプローチは①の方法と比較して、人件費から逆算で必要売上や必要利益を算出する必要があるので難易度は高くなります。
ただ、本当に欲しい人材を確保するなら収益モデルを見直す必要があるということに強制的に気づかせてくれますし、より強い経営体質になるための良いきっかけにもなります。
予算シミュレーションの注意点
どちらのアプローチが適しているかは、業種やビジネスの状況によって異なります。
ですが、どちらの方法も数字のデータは必要です。
売上データ(必要に応じて患者数やキャンセル率)、経費の推移、利益の着地といった基礎情報になります。
要は、上のストラック図の各ブロックを埋めていく必要があるのでその元データが必要ということです。
システムから出せるようであれば問題ないですが、会計が絡む経費や利益の数字は顧問税理士さんに過去の実績等を出してもらいましょう。
もちろん、毎月試算表をもらっていてその試算表から導き出すことができればその必要はありません。
重要なのは、ご自身のビジネスの特性や人材の市場を踏まえた上で、適切なアプローチを選択することです。
あと、どちらのアプローチを選ぶにしても、利益を確保しながら人件費を管理することが最終的な目標であることを忘れないようにしましょう。
ただ例外的に、状況によっては、短期的には先行投資で人件費を払う覚悟をしても良いかもしれません。
先行投資とは人件費(コスト)をかけてもリターン(利益)がない状態です。
特に転職市場・就活市場に目的の人材数が少ない場合は、即戦力にならない人材を採用して中長期で投資回収をするという戦略も取り得るからです。
まとめ
人件費の予算の決め方は、
- 売上から人件費を割り当てるアプローチ
- 人件費の相場から逆算して利益を確保するアプローチ
の2つの方法があるという話をしてきました。
資金繰りと人材確保は両輪の関係にあり、両方がうまく噛み合うことで経営が前進します。
顧問税理士さんや経理担当さんと一緒に人件費の予算を見える化してみましょう!