こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。
歯科開業で「まずはユニット3台で」というのは、いまや標準的な選択です。
ただ、この3台という規模には、資金繰りの面で見落とされがちな落とし穴があります。
3台が標準と言われるからこそ、その内側で何が起きているのかを、いちど立ち止まって見ておく価値があるというのが僕の考えです。
今回は採用やマネジメントの話は抜きにして、あくまでお金の視点から、3台スタートの難しさを整理してみます。
ちなみに、歯科医院で保険診療を思い通りの時期にスタートすること自体も簡単なことではありません。

この記事では台数の問題をクリアにしつつ、スケジュールの問題については上記の記事で詳しく書いていますので、後ほど読んでみてください。
それでは本題に入っていきます。
ユニット3台開業後の二つの道
ユニット3台で開業すると、その後は大きく「規模を維持する」か「拡大する」かの二つに道が分かれます。
理屈のうえでは「縮小」もありますが、開業時に組んだ融資の返済がある以上、最初から縮小を選択肢に入れる方はほとんどいません。
つまり現実には、維持か拡大かの二択です。
なぜ縮小が選びにくいのか。
開業時には、ユニットや設備、内装に大きな初期投資をしています。
その多くは借入やリースでまかなわれており、たとえ規模を小さくしても、すでに投じたお金は戻ってきません。
残るのは、返済の義務だけです。
だからいったん3台で始めた以上、現実的な道は「維持」か「拡大」に絞られていきます。
このうち、最初から拡大を計画している先生は、それほど問題になりません。
長く温めてきた構想と、それに見合うモチベーションがあるからです。
人を集め、大きくすることがやりがいを感じる院長さんもいらっしゃるでしょう。
資金計画も拡大を前提に組み立てられています。
規模を「維持したいのに維持できない」問題
問題になるのは、3台のまま維持していくつもりだったのに、それができなくなるケースです。
「そんなことがあるのか」と思われるかもしれません。
しかし、これはこれから各地で増えていく可能性が高いと考えています。
背景にあるのが、地方を中心とした歯科医療の供給不足です。
最大の要因は、開業医院長の高齢化。
人口が減るスピードよりも、閉院や診療縮小のスピードのほうが速い地域では、需要と供給のバランスが崩れ、歯科医療が行き届きにくくなっているのはご存知かと思います。
そうした地域では、若い先生の新規開業医院に患者さんが殺到する、という現象が起こり得ます。
実際、すでにあちこちで起き始めているのが現実です。
患者さんが集まること自体は、ありがたい話です。
ただ、ユニット3台という規模では、その需要を受けきれなくなることがあります。
患者さんは予約が取りづらくなり、先生自身も思うようなアポイントを組めない。
現場が忙しさで疲れていくのを見れば、増やすつもりはなかったとしても、「もう少し余裕をつくってあげたい」という気持ちにもなるでしょう。
こうして、当初は維持のつもりだったのに、なかば仕方なくユニットを増設する、という流れが生まれていきます。
しかも増設は、思い立ってすぐ叶うものではありません。
スペースの確保から設計、工事、機器の納品まで、それなりの時間がかかります。
その間も現場の逼迫は続きますし、忙しさが要因で現場の雰囲気が悪くなり、離職率が高まる危険性だってあります。
拡張工事が終わったタイミングで蓋をあけてみたら、せっかく増設したユニットを動かせるスタッフさんが辞めてしまっていた、という事態が資金繰りにも大きな影響を及ぼすのはいうまでもなく。
そもそも拡大するタイミングを見極めること自体が、難しいのです。
拡大したらしたで後戻りが難しい
もうひとつ、維持することを諦めて、規模を拡大する選択肢をとったときのリスクについて話していきます。
脅すわけではないですが、最近の歯科医院の倒産事例を見ていても、一度拡大に舵を切ると、後戻りするのは容易ではないことがうかがえます。
拡大のために起こした融資は、「やっぱり縮小しよう」と思っても、それに合わせて減ってはくれないからです。
倒産するケースは拡大するために追加融資を受けるが、それに見合う利益が出ず、十分な待遇や設備投資ができずに集患もスタッフの定着率も悪くなった結果、返済できずに倒産の道を選ぶ。
この傾向が強いように思えます。
厄介なのは、返済は規模が大きい時の金額のまま続くことです。
さらにいえば、拡大し続けるのをやめてある一定規模で維持に切り替えたとしても、その規模を維持することに疲れて売上が落ちていけば、返済の負担だけが重く残り、じわじわと苦しくなっていきます。
人件費も同じ構造です。
ユニットを増やすということは、勤務医や歯科衛生士を雇うということでもあります。
そして一度増やした人件費は、そう簡単には減らせません。人を減らせば、ユニットに空きが出ます。
それは、わざわざ借入をして導入したユニットが、収益を生まない負の資産に変わることを意味します。
だから、減らすに減らせない。固定費が下方向に硬直化していくわけです。
こういう理由で、拡大するなら医療供給不足のような外部環境がきっかけではなく、自らのやりたい意思で拡大の舵を切ることが必須ではないかと考えています。
あるべき開業の選択肢
だからこそ、歯科開業のスタートで避けたいのは、「標準だから、ほどよく3台で」という選び方です。
極論をいえば、特にこれから地方で開業する医院は、3台スタートにするなら拡大することを前提とした事業計画を組んだほうがいいです。
理由は上述したとおりで、3台の規模を維持しようとしても維持できないからです。
より多くの患者さんを受け入れるため、より多くの給与をスタッフさんに払うため、規模を増やさざるを得ない状況が待っているでしょう。
ですので、拡大思考を持っていないのであれば、1台若しくは2台の小さな医院を開業し、事業計画は多くの患者さんを見ない前提、ほぼ雇用がない前提で組み、融資もそれに見合った額に抑えることが堅実かつ確実な経営です。
選ぶなら、将来の拡大志向をはっきり持ったうえでの3台スタートか。あるいは、銀行の勧めに過度に引きずられず、ユニット1台のミニマムな開業か。僕は、このどちらかだと考えています。
実際のところ、「それが標準規模だから」「ある程度規模がないと収益性が見込めないから」という理由で、小規模にはじめたいけど3台スタートを勧められることが少なくありません。
銀行やディーラーからの提案も、多くはこの規模を前提にしています。
歯科開業でまず流されてはいけないのは、間違いなくこの部分だと思います。
実際、「本当はユニット1台で小さく始めたかったのに、銀行に貸し渋られたり、ディーラーに強く勧められたりして、結局3台スタートになった」というケースは、思いのほか多くあります。
この「銀行に理解してもらえない」という壁の越え方は、別の記事にまとめています。

逆に、「もっと大きく始めたかった」という声は、あまり聞きません。
いまの時代、小さく始めるほうがむしろ希少で、それだけ理解がされづらいのです。
とはいえ、どちらが合っているかは、ご自身が本当にやりたいことと、ご自身の特性を見極める必要があります。
ユニットを何台でスタートするか、拡大を目指すのか否かは、単なる資金繰りの問題ではなく、院長先生の医療コンセプトを決める選択です。
もっというと、資金繰りの問題はどれだけの院長報酬が必要か、に行き着くので、院長先生の生活感やライフプランをベースにして考える必要があります。
だからこそ、開業前のできるだけ早い段階で、誰の意見にも流されることなく、定性面と定量面から一度立ち止まって考えてみることを強くおすすめします。
PS:
この「何台でスタートしたらいいか問題」を相談したい方は、ぜひLINEをください。
先生の理想を聞きながら、経営が成立するか数字で裏付けしていきます。


