こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。
今日も結論から言わせてください。
開業日に保険診療をスタートさせるのは、意外とハードルが高いです。
「最初から自費診療で来てくれる患者さんはいないし、保険診療がないと売上は上がらないじゃないか、、、」という声はその通りで。
だからみなさん保険診療をなるべく早くスタートさせたいわけですが、丁寧に準備をしないとその希望は叶いません。
具体的には、設計事務所、建設会社、ディーラー、メーカー、銀行。
この全員の足並みが揃って、はじめて開業日に保険診療が始められます。
誰か1人が遅れると、スケジュールは簡単に崩れます。
そして、開業前の院長先生の大事な役割が、この「関係者マネジメント」なんです。
保険診療スタートの仕組みをおさらい
まず前提の話です。
保険診療を行うには、厚生局から「保険医療機関」の指定を受ける必要があります。
そしてこの指定日は、原則として毎月1日。月に1回しかチャンスがありません。
指定を受けるための流れはこうです。
①開設後10日以内に保健所へ開設届の提出
②保健所の立入検査
③開設届の写し(副本)受領
④厚生局への保険医療機関指定申請
⑤翌月1日に保険医療機関指定
この一連の流れが、指定申請締切までにすべて終わっていなければいけません。
しかも、指定申請の締切は厚生局によって異なりますが、多くの場合、前月の中旬あたりに設定されています。
たとえば4月1日開業を目指すなら、3月中旬までに申請を終える必要があります。
そのためには3月上旬までに保健所検査をクリアしておきたい。となると、内装の引き渡しと機器の設置は2月末には終わっていないといけないことになります。
こうやって逆算していくと、「開業日の1ヶ月以上前に、ハコと機器は完成している」のが理想形だと分かります。
つまり、どこかで1週間遅れただけでも、指定が翌月にずれる可能性があるということです。
ただここで一点。
地域の保健所によっては、「開設」の基準が曖昧です。
既に完成形に近い仕上がり具合でないと、立入検査してもらえないところもあるし、ある程度出来上がっていれば受け入れてくれるところもあります。
この辺りは保健所の担当者に事前に工期の進捗をお伝えしておくのがおすすめです。
保健所には図面が出来上がった段階で相談しに行ったほうがいいですが、スムーズに開設届が受理されることを意識してコミュニケーションをとっていきましょう。
関係者それぞれにある「遅延ポイント」
では、どこでスケジュールが崩れる可能性が高いのか、を関係者ごとに見ていきます。
設計事務所
図面の確定が遅れると、すべてが後ろにずれます。
意外と多いのが、保健所の構造基準の見落としです。手洗いの位置、X線室の遮蔽、待合と診療スペースの区画。保健所によって細かい運用が違うので、事前相談を飛ばすと検査で指摘を受けます。
保健所への相談は設計士さんに帯同してもらいましょう。
また、自治体への建築確認申請が必要な工事の場合は、その期間も必要になります。
いま自治体は人手不足&残業規制強化で公務員の稼働時間が減っているので、下手すると数ヶ月単位での申請手続きが必要です。
設計事務所さんも分かっているはずですが、それ込みで工期が組まれているか念には念を入れて確認しておきましょう。
建設会社
工期の遅延は定番のリスクです。
ポイントは、引き渡し日を「保健所検査から逆算」して設定できているかどうか。ギリギリの工程を組んでいると、ちょっとした資材の遅れで検査に間に合わなくなります。
しかも昨今は資材の調達不安もさることながら、建設会社の人手不足も深刻です。
人手不足はこちらがコントロールできる問題ではないからこそ、余裕をもって開業日を設定しましょう。
ディーラー・メーカー
ユニットやX線装置の搬入・設置は、内装が終わってからしかできません。
つまり工事が遅れると、機器の設置も連動して遅れます。
さらに最近は、機器そのものの納期が長期化しているケースもあります。発注のタイミングが遅いと、内装は完成しているのに機器が届かない、という現象も起こります。
銀行
銀行にはなるべく早く最終条件を提示してもらいましょう。
銀行やその担当者にもよりますが、融資条件は交渉を進めていくなかでコロコロ変わります。
当初支店担当者から言われていた条件が変わってきたときに、資金繰りに問題ないかその都度確認をしましょう。
そうしないと、設計や工事は進む一方で、資金調達は未完成の状態が続きます。
これはこれで、大きな不安です。
この辺りの話はこちらの記事も参考にしてみてください。

スケジュールが崩れる理由
ここで強調しておきたいのは、スケジュールが崩れるとき、誰かがサボっているわけではないということです。
設計事務所も建設会社もディーラーも銀行も、みんな自分の仕事は真面目にやっています。
問題は、横の連携です。
たとえば、建設会社は「引き渡し日」をゴールに工程を組みます。一方でディーラーは、引き渡し後に機器を搬入・設置する前提でスケジュールを考えています。
このとき、引き渡し日と搬入日の間に十分な余裕がなければどうなるか。引き渡しが数日遅れただけで、機器の設置が保健所検査に間に合わなくなります。
これは構造的な問題なので、業者の善意や頑張りでは解決しないことのほうが多いです。
だからこそ誰かが全体を見て、つなぐ必要があります。
院長がやるべき関係者マネジメント
ここからがいちばんお伝えしたかったことです。
じゃあ、誰が全体を見るのかというと、もちろん院長先生です。
全員の情報が集まるのは、院長先生のところだけなので。
具体的にやるべきことは3つです。
①全体工程表をつくる
開業日から逆算した全体工程表を1枚つくりましょう。
設計事務所さんやディーラーさんが作成してくれるケースもありますが、どんな当事者がいるかはケースバイケースなので、他の当事者のピースが抜け落ちている可能性が高いです。
保険医療機関の指定日から逆算して、指定申請、保健所検査、機器設置、内装引き渡し、融資実行の日付を並べます。各業者の個別スケジュールではなく、全体を1枚で見られる状態にすることが大事です。
形式はExcelでもスプレッドシートでも構いません。大事なのは、関係者全員がいつでも同じものを見られること。共有した工程表が「共通言語」になります。
②関係者を集めた定例ミーティングを開く
全員が同じ工程表を見ながら進捗を確認する場があるだけで、事故は防げます。
最近はオンライン会議で十分です。設計士さん、現場監督さん、ディーラーさん、税理士に30分だけ集まってもらう。
それだけで、業者間の「言った・言わない」「聞いてない」がほぼなくなります。
③決定事項と期限を必ず文字に残す
口頭の「大丈夫です」ほど怖いものはありません。誰が、いつまでに、何をやるのか。
何かしらの記録に残る形で共有してください。
最近はオンライン会議も、自動で文字起こししてくれたり、議事録を作ってくれたりするAI機能が備わっています。
ここでこそAIの恩恵を受けていきましょう。
まとめ
開業日に保険診療をスタートさせるには、関係者全員の足並みが揃っている必要があります。
そして、全体の指揮を執れるのは院長先生だけです。
診療の準備だけでも大変な時期に酷な話ですが、ここを業者任せにした先生ほど、開業日の遅延や想定外の出費に苦しむ傾向があります。
工程表と資金繰り表はセットです。
スケジュールが1ヶ月ずれれば、お金も数百万円単位で動きます。逆に言えば、スケジュールをきちんと管理できる先生は、開業後の資金繰りも安定しやすくなります。


