歯科開業融資、断られるより怖いのは「50点の提案」

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こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。

歯科医院の開業準備を進めていると、多くの先生が身構えるのは保健所の検査です。

図面通りに設備が揃っているか、消毒滅菌の体制は整っているか、X線室は基準を満たしているか。

細かいチェックはありますが、実は保健所対応はそれほど難しくありません。

基準が明確に決まっていて、満たしていれば通るし、満たしていなければ通らない。0か100かの世界だからです。

指摘事項があっても「何を直せば通るか」がはっきりしているので、粛々と対応すればいいだけです。

一方で、開業準備で本当に頭を悩ませることになるのが銀行融資です。

保健所と違って、銀行は「はい」か「いいえ」だけで答えてくれません。むしろ厄介なのは、銀行が明確に断ってくるケースではなく、中途半端な条件を提示してくるケースです。

目次

保健所対応より銀行対応が難しい理由

銀行の中途半端な提案の具体例

たとえば、

  • 希望した融資額の7割しか出ない。
  • 融資額は希望通りだけど、返済期間が短い、もしくは金利が想定より高め。
  • 追加の担保設定が条件になる。
  • 自己資金をもう少し積んで欲しいと言われる。

こうした「満額回答ではないが、ゼロでもない」提案は、開業準備の現場で頻繁に起こります。

もう少し具体的にみてみましょう。

たとえば希望融資額7,000万円に対して、実行可能額は5,500万円までという回答。差額の1,500万円は自己資金の追加で埋めてほしいというケースです。

この場合、自己資金を追加で1,500万円出せるという状況はほとんどありません。
なぜなら当初から自己資金の余裕があるなら出しているからです。

そうすると、開業費自体の縮小を検討することになります。

内装のグレードを落としたり、中古の医療機器を買ったり、ユニット数を減らしたり。

これらと融資を天秤にかけて経営者として許容できるかどうかを考えることになります。

なぜこの判断が難しいのか

保健所であれば、指摘事項に対して淡々と是正すればそれで終わりです。

しかし銀行の中途半端な提案には、妥協してOKかどうかを見極めなければいけません。

この判断が難しい理由は、比較対象が常に「仮定の話」だからです。

今の銀行の提案を飲まなかった場合、本当にもっと良い条件が引き出せるのかは、実際に交渉してみるか、他行に打診してみるまでわかりません。

しかも交渉や他行探しには時間がかかり、その間に物件の契約期限や内装業者のスケジュールなど、開業計画全体が後ろ倒しになるリスクを抱えることになります。

つまり先生方は「今の条件を受け入れるコスト」と「より良い条件を探すためのコストとリスク」を、情報が不十分なまま比較しなければなりません。

しかも開業融資の経験は一生に何度もあるものではないので、判断材料となる相場観そのものを持ち合わせていないケースがほとんどです。

いや、実際はありますよ。

一度開業にチャレンジしたけど、銀行の融資が満足に下りずに撤退することになって、数年後に再チャレンジするケースは。

でも理想をいえばそれは避けたいじゃないですか。

開業したいと思ったときに必要なお金を準備して、開業医人生をスタートさせたいはずです。

融資交渉のための3つの視点

この中途半端な提案と向き合うときに、押さえておきたい視点が3つあります。

相場に対してどの位置にあるか

1つ目は、提示された条件が「相場に対してどの位置にあるか」を客観的に把握することです。

金利や返済期間は、画一性はないものの、ある程度のトレンドと適正値はあります。

これらから大きく外れた提案を受けたら、他の医院より難しい条件で経営をしていくことになります。

逆に、50点の提案がトレンドと適正値を反映していたら、その条件を飲むという選択肢もあり得るわけです(つまり当初の希望が高すぎただけ)。

ですので、今の提案が明らかに厳しい水準なのか、それとも歯科開業案件としては妥当な範囲なのかを、第三者の視点で確認できるかどうかが最初の分かれ目になります。

銀行が言う「だいたいこんなものですよ」を真に受けてしまうと、思わぬ損をしてしまうことになりかねません。

事業計画に改善の余地はないか

2つ目は、事業計画そのものに改善余地があるかを見直すことです。

銀行の提案が渋いのは、単に金融機関の姿勢だけでなく、事業計画書の説明が不十分で、返済能力への不安を払拭できていないことが原因である場合も少なくありません。

数値の根拠や開業後の収支シミュレーションを補強するだけで、同じ銀行から条件が上がる交渉材料になることもあります。

あとは定量的な分析だけではなく、先生の経歴や開業に至った経緯、思い、理念をしっかり伝えきる事業計画にすることも大切です。

銀行マンも結局は人ですので、いかに心を動かせるかが鍵になってきます。

融資交渉が開業にどれだけ影響するか

3つ目は、時間軸への影響を具体的に数字で見積もることです。

交渉や他行打診にかかる期間が、物件契約や開業スケジュールにどの程度の影響を与えるのかを考えましょう。

開業が1か月遅れることの機会損失と、条件改善によって浮く利息負担を比較すれば、感覚論ではなく数字で判断できるようになります。

たとえば金利差0.5%は、5,000万円を15年で返済する場合、総支払額にして200万円以上の差になることも珍しくありません。

一方で開業が1か月遅れることで生じる機会損失は、人件費や賃料の支払いだけが発生して収入がない期間が延びることを意味します。

どちらが大きな影響を持つかはケースバイケースですが、感覚ではなく数字に落とし込んで比較することで、初めて「交渉する価値があるか」を冷静に判断できるようになります。

あとは、融資を必要とする不動産の契約を先延ばしできるかどうか、にも拠ります。

不動産こそ一期一会なので、融資条件が多少希望どおりではなくても、自分のものにするために妥協するという選択肢は全然あり得ることです。

おすすめ:ひとりで判断しない

銀行融資の「50点の提案」をどう扱うかは、経験と相場観がなければ適切な判断が難しい領域です。交渉すべきか、飲むべきか、他行に切り替えるべきか。

この判断を先生おひとりで抱え込んでしまうと、開業準備における大きなストレス要因になってしまいます。

だからこそ、開業支援の初期段階から、事業計画の作成と並行して、融資条件を客観的に評価できる専門家に相談しておくことをお勧めします。

保健所対応のような「明確な正解がある課題」よりも、銀行融資のような「中途半端な提案にどう向き合うか」という曖昧な課題にこそ、相談先があっていいのではないかと思います。

税理士は融資審査そのものを左右する立場ではありませんが、他医院の開業事情を踏まえた情報提供をしたり、事業計画書の数値に根拠を持たせたり、複数行の提案を横並びで比較したり、開業スケジュールへの影響を試算したりすることで、先生が納得して判断を下せる材料を揃えることができます。

銀行との一次交渉を先生おひとりで抱え込む必要はありません。

開業準備は、内装や機器選定、スタッフ採用、広告物の作成、各関係機関への大量の書類作成など、決めなければならないことが同時並行で押し寄せてきます。

そのなかで、融資条件という数字とお金が絡む問題は、最初に抱える問題であり、クリアが必須の問題でもあります。

お金の準備は盤石にして、他にやるべき開業準備に専念できる環境づくりをすることを強くおすすめします。

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