こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。
歯科医院の開業を考えている方のなかには、絶賛子育て奮闘中という方も多いです。
業種は違いますが、実際僕もそうです。
子育てはしつつ、パートナーと親族のサポートのおかげで独立して仕事ができています。
今回の記事は、そんな「大切な家族の存在」に「節税」を絡めたテーマで話していきます。
税理士がこんなことを言うの?と思われるかもしれません。
でも今からお話しすることは、お客さんと長く向き合ってきたなかでの僕の気づきでもあります。
節税の提案をすること自体は簡単です。でも、それが先生や先生の家族にとって本当にいいことなのかを気にしています。
今日はその理由を、税務の話も交えながら正直に書いていきます。
個人事業主を一番近くで支えている存在
開業すると、いろんな人が関わってくれるようになります。
歯科なら内装業者さん、医療機器のディーラーさん、銀行の担当者さん。
患者さん、スタッフさん。
みなさん、先生の開業を支えてくれる大切な存在です。
彼・彼女らがいないと物的に開業は難しくなるので。
でも、物的なもの以外、つまり精神的に一番近くで支えてくれているのは誰か。
業者さんは、商売だから関わってくれています。
患者さんは、診療を受けるために来てくれています。
スタッフさんは、給与をもらって働いてくれています。
では、見返りを求めずに、ただ先生のそばにいてくれる人は?
開業の決断を、「やってみなよ」と背中を押してくれたパートナーですよね。
仕事で疲れて帰ってきたパパ・ママを無邪気に待っている子どももいるはずです。
一番近くで、一番長い時間、支えてくれているのは家族です。
これは漏れなく島田も同じです。
だから僕は、医院の利益で家族を幸せにしてほしいと思っています。
「家族のために使うお金」は経費にならない
ここで税務の話をさせてください。少し専門的な話になりますが、大事なことなので読んでいただけると嬉しいです。
節税というのは、必要経費を増やして利益を減らし、税金を少なくすることです。
(他にも税額控除や特別控除がありますが、適用範囲が限定的なのでここでは省略します。)
必要経費として認められるのは、事業に必要な支出だけです。
では、家族旅行の費用は経費になるでしょうか。
子どもの習い事の月謝は?奥さんへのプレゼントは?
残念ながら、これらはすべて経費になりません。
家族を喜ばせるためのお金は、税務上事業に必要な経費とはみなされないんです。
一応、個人医院と医療法人に分けて、取り扱いを解説していきます。
個人医院の場合
家族のために使うお金は「家事費」として扱われます。
「家事費」をいくら使っても必要経費は増えないので、事業上の利益(専門用語で事業所得)にも変化はなく、税金を抑える効果もありません。
唯一、事業を手伝ってくれている家族に専従者給与を支払えば必要経費として認められますが、これはその家族に勤務実態があり、給与の金額も一般的な水準と比較して妥当な金額までしか認められません。
医療法人の場合
院長先生への支出は「役員報酬」や「役員への貸付」として処理されます。
役員報酬は、毎月同額で支払う「定期同額給与」以外は経費になりません。
年の途中で「今月は家族旅行に行きたいから報酬を増やそう」ということができないんです。
貸付として処理した場合は、利息の問題が生じますし、特に金融機関は「役員への貸付」を嫌います。
金融機関としては、自分が貸したお金が事業以外の私用に使われているのではないか、と疑わざるを得ないからです。
節税すると、家族に使えるお金も減っていく
ここが、僕が一番お伝えしたいことです。
院長報酬の原資は、医院の利益です。
利益が多ければ、院長報酬を多く取れます。
院長報酬が多ければ、手取りが増えます。
手取りが増えれば、家族のために使えるお金も増えます。
逆に、節税をしようとして必要経費を増やすと利益が減ります。
利益が減れば、院長報酬の原資も減ります。
院長報酬が減れば、家族のために使えるお金も減ります。
| 節税 する→ 利益が減る → 院長報酬の原資が減る → 家族に使えるお金が減る |
極論ですが、節税は家族を幸せにすることと逆行します。
もちろん、国の政策にのっとって要件を満たす税額控除や特別控除に該当する優遇税制はどんどん使ったほうがいいです。
でも、そういった優遇税制も本当に必要な投資をした結果、要件を満たすのであればいいのですが、院長報酬を削ってまでやるかと聞かれれば慎重に天秤にかけたほうがいいでしょう。
利益を残し資金を整えることが家族を幸せにする
では、何をすればいいか。
答えはシンプルです。
利益をきちんと残して、資金繰りを安定させる。
そこから院長報酬を最大化して、家族のために使う。
これだけです。
利益が残れば、こんなことができるようになります。
| ・家族旅行に行ける ・子どもの習い事や教育に投資できる ・パートナーに「ありがとう」を形にできる |
そして医院においては、
| ・必要なときに銀行から借りられる状態を保てる ・新しい医療機器を入れて、やりたい診療ができる ・人件費のベースアップができる |
という結果になります。
逆に言えば、利益が残っていなければ、これらのどれもできません。
「やりたいことがあるのに、お金がないからできない」というストレスが積み重なっていきます。
お金の心配があると、人は人に厳しくなります。
仕事に集中できません。家族との時間もイマイチ楽しめません。
「今月きつい」と感じているとき、どうしても心の余裕がなくなってしまうんです。
僕自身も個人事業主として、この経験があります。
お金の不安があると、子どもに声をかけるゆとりがなくなります。家族との会話が減ります。
院長先生も同じだと思います。
診療で疲れて帰ってきたとき、さらにお金の心配まで頭にあったら、家での顔が変わってしまいます。
自分は変わっていないつもりかもしれませんが、家族はその微差に絶対に気付きます。
資金繰りが安定していれば、オフのときは本当にオフになれます。
家族と過ごす時間を、心から楽しめます。
開業を応援してくれた家族への恩返し。それは「利益を残し、資金繰りを整えること」だと僕は思っています。
まとめ
開業前から一緒に準備をして、長く関わってきた先生を見ていると、資金繰りが安定している先生ほど家族との関わり方を大切にしていると感じます。
いや、もしかしたら家族との関わり方を大切にしている先生ほど資金繰りが安定しているのかもしれません。
で、これは何も家族と過ごす時間が多い、という単純なことではなく。
家族と良い関係を作れているということです。
そして良い関係を作ることは個人事業主の特性上、そう簡単なことではないとも実感しています。
人間関係は心に余裕がないと難しいですし、お金の問題は大きなストレスになり得てしまうからです。
そのために利益を残す、院長報酬を増やす、大切な人のために好きに使うことが、ストレスを根本的に緩和する方法です。
ここまでいうと、利益を増やしたら税金を取られる、だから働き損じゃないか?という意見も聞こえてきそうなので、一応お伝えしておくと。
税金の計算式はざっくりいえば利益×税率です。
利益以上の税金は取られることはない、つまり、利益を出せば必ず手元の現金は増えるのが自然の摂理です。
その土台にあるのは、「利益を残す」という意識だと思っています。
だから医院の財務の設計を、先生のライフイベントや家族の将来と合わせて考えることを、僕はとても大切にしています。


