こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。
昨今の開業費の高騰と高齢化による閉院で、居抜き物件での開業が注目を浴びています。
確かに開業費の抑制というメリットはあるかもしれませんが、居抜き物件ならではの注意点があるのです。
声を大にしてお伝えしたいのは、物件の条件がある程度揃ったら、確定をする前に、できるだけ早く銀行へ開業融資の相談に行ってください、ということです。
その居抜き物件を購入するのでも、賃貸するのでも。
理由はシンプルです。
銀行は物件の築年数や広さを見て、融資条件を決める傾向にあるからです。
つまり「どういう物件を選ぶか」が、「どれくらいの金額を、どれくらいの期間で借りられるか」に直結します。
この根回しを後回しにすると、物件が確定した後に、銀行から融資条件の改悪を言い渡される、ということが起こり得ます。
たとえば「希望していた返済期間より短くなった」「自己資金をもっと入れてほしいと言われた」といった話です。
売主・貸主との交渉が進み条件が確定したあとにこれを言われると、もう後戻りができません。
ここで大事なのは、早めに銀行の本店審査部の感触を掴んでおくことです。
具体的には、支店担当者から本店審査部に稟議を通してもらい、支店担当者と打ち合わせた条件で本店が承諾してくれそうか、その見込みを確認しておく、ということです。
本店審査部が正式に内諾を出すと、融資条件はそこで確定します。
だからこそ、確定する前の段階、つまり物件の契約前に、後戻りできる状態を保ったまま、本店の承諾見込みを探っておきたいのです。
諸々話が進み過ぎたあとに「やっぱりこの融資条件じゃ無理だ」とならないように。
先日、僕がThreadsでこの話を投稿したところ、開業準備中のお客さんから「まさにそれで悩んでいました」という声をいただきました。
それだけ、慎重にコトを運ぶべきポイントだということでしょう。
ということで、注意点と対策をより詳しく解説していきます。
融資と居抜き物件の相性
銀行の審査は想像以上に時間がかかる
まず知っておいてほしいのが、銀行の審査の仕組みです。
開業融資は、支店の担当者と話して終わり、ではありません。
通常は、まず支店の担当者が融資条件を作成します。
そして、その条件を本店の審査部に稟議として上げ、本店が承認して、はじめて正式に融資条件が決まります。
つまり、目の前の支店担当者がいくら前向きでも、最終的にOKを出すのは本店審査部です。
ここに時間がかかります。
支店から本店に話が上がり、審査部が判断して、その結果が戻ってくる。
このやり取りには、それなりの日数がかかると思っておいてください。
ですから、思い立ってすぐに融資条件が固まるわけではない、という前提で動くことが大事です。
本店がOKを出さないこともある
やっかいなのは、支店が作成した融資条件に対して、本店審査部がそのままOKを出さないケースがあることです。
その場合、与信のために追加の情報を出したり、追加の担保を入れたりすることになります。
追加の情報というのは、たとえばより詳細な事業計画や、与信力を高めるための自己資産の情報開示です。
それでもOKが出なければ、最終的には融資条件の妥協点を探ることになります。
妥協点で経営できるのか
ここからが本題です。
問題は、その妥協点で先生が妥協できるかどうかです。
たとえば、物件の築年数が古いと、返済期間が短くなることがあります。
返済期間が短くなれば、当然、毎月の返済負担は重くなります。
借入金額が同じでも、15年で返すのか、10年で返すのかで、月々の返済額はまったく変わってきます。
仮に7,000万円を借りるとして、15年返済と10年返済では、月々の返済額に約20万円の差が出ることもあります。
この差が、開業直後の資金繰りにそのまま効いてきます。
患者さんがまだ十分に増えていない時期に、この返済負担に耐えられるか。
その負担が増えたときに、その開業地での事業計画が成り立つのか。
特に開業から最初の3年間、無理なく経営していけるのか。
ここをシビアにシミュレーションしておかないと、「予想していた返済条件が変わって、計画が崩れる」という最悪の事態になりかねません。
開業は、最初の3年をどう乗り切るかで、その後の安定感がまったく変わります。
だからこそ、融資条件が固まる前に契約の話だけ進んでしまう、という状態は避けたいのです。
対策:融資相談と物件交渉を「同時並行」で進める
ではどうすればいいか。
ポイントは、融資の相談と物件交渉を、同時並行で進めることです。
物件情報と内装費の見積もりを早めに揃える
結局、居抜き物件で開業するときに銀行が気にするのは「どれくらいの融資を、どれくらいの期間で貸せる物件なのか」です。
これを検討してもらうために、物件の情報と、その内装にかかる費用の情報を、早い段階で揃える必要があります。
そのうえで、支店担当者と融資条件を協議しながら、本店審査部までかけあってもらいましょう。
この流れを、物件を確定する前に進めておくことが重要です。
順番としては、
- 気になる物件が出てきた段階で、まず銀行に相談し物件情報を共有する
- それと並行して、内装業者やメーカーに見積もりを依頼する
この二つを同時に動かすイメージです。
このとき、物件の図面や売買・賃料条件など、手元にある情報はできるだけ早く銀行に渡しておくと、話がスムーズに進みます。
銀行側も、判断材料が早く揃えば、それだけ早く本店審査部に話を上げてくれます。
逆に、情報が小出しになると、時間がかかってしまいます。
レントゲン室には要注意
特に居抜き物件で気をつけてほしいのが、レントゲン室です。
居抜きのレントゲン室は、広さが足りないことがあります。
今の基準に合わせようとすると、大規模な追加工事が必要になる可能性があります。
これは内装費を大きく左右する要素です。
「居抜きだから内装費は抑えられるはず」と思っていたのに、フタを開けたら想定以上にかかった、というのはよくある話です。
だからこそ、融資の相談と同時に、内装業者とメーカーに相談して、見積もりを作成してもらってください。
「思っていたより内装費がかかる」という事実は、できるだけ早く把握しておきたいところです。
内装費が変われば、必要な借入額も変わり、融資条件の話も変わってくるからです。
医療機器はそこまで神経質にならなくて大丈夫
逆に、あまり神経質にならなくていいのが、医療機器への融資です。
もちろん、必要な融資が借りられず医療機器が足りない、という事態は避けなければいけません。
ですから、正確な見積もりを取ること自体は必要です。
ただ、メーカーやディーラーの見積もりがあれば、医療機器への融資はほぼ通ります。導入する医療機器の違いで返済期間が変わるということは、聞いたことがありません。
つまり「どれくらいの融資を、どれくらいの期間で借りられるか」を知るうえでは、医療機器の選定にそこまで時間をかける必要はないのです(もちろん、融資額が足りなくなる事態は避ける必要があります)。
それよりも、物件と内装費の情報を早く揃えることに、力を注いでください。
ここが融資条件を左右する一番のポイントだからです。
そして、出てきた融資条件をもとに、開業後の資金繰りをきちんとシミュレーションしておく。
「この返済額で、最初の3年間を無理なく回せるか」を、数字で確認しておくことが大事です。
ここが確認できてはじめて、安心して物件の契約に進めます。
まとめ
最後に、今日の話をまとめます。
居抜き物件での開業は、物件の条件が融資条件を大きく左右します。
だからこそ、契約を急ぐ前に、まず銀行へ相談してください。
そして、正式な内諾が下りて融資条件が確定する前に、支店担当者から本店審査部に稟議を通してもらい、打ち合わせた条件で承諾してくれそうかの見込みを掴んでおく。後戻りできる状態を保ったまま、です。
物件情報と内装費の見積もりを早めに揃え、支店担当者と協議しながら本店までかけあってもらいましょう。
この順番を守るだけで、「契約してから条件が変わった」という事故は、かなり防げます。
開業は、最初の一歩の進め方で、その後の経営の余裕が変わってきます。
焦らず、でも早めに。
ぜひ、物件が気になった段階で、銀行へ働きかけてみてください。


