こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。
歯科医院の節税対策を検索するとたくさんのワードが出てきます。
医療法人化、MS法人、優遇税制、専従者給与、減価償却、小規模企業共済、経営セーフティ共済などなど。
どれも取り入れる価値はあるのですが、まず押さえておかないといけないことがあります。
それはこれらは節税の手段であり、ただのツールでしかないということ。
いや、もちろん手段やツールを選ぶのも大切なことなんですが、選ぶための適切な判断材料が出揃ってないと逆にお金を失ってしまうことになるんです。
で、これをするために何も難しいことをする必要はなく。
毎月顧問税理士と数字の振り返りをし、将来予測をしながら今後起きそうなイベントをざっくばらんに話をする、これだけで大丈夫です。
このブログではなぜこれで大丈夫なのか、むしろなぜこれが節税の最適解なのかを話していきます。
節税の勘所
税金と聞いたら利益にかかるもの、というイメージを持たれると思います。
利益が増えたら税金が増える、だから税金を減らすために利益を圧縮する節税策を探す、という思考ですね。
このロジック自体は間違っていません。
利益に対してかかるのが個人医院であれば所得税や住民税、医療法人であれば法人税や地方税ということになります。
あとは、利益関係なく経済活動や所有物に課税が起こる税金もありまして。
経済活動で課税が起こるのが消費税、所有物に課税が起こるのが固定資産税・償却資産税ですね。
まあ細かい税金の種類の話は置いておいて、税金を減らすためには利益の現状と予測、今後の経済活動や所有物の変化を把握する必要があるのです。
- いまどんな状況なの?
- これまで何をしてきたの?
- これから予測はどんな感じ?
- これから何をしたいの?
- これから何が必要なの?
こういった過去・現在・未来の事象を網羅的に把握することが節税の第一歩だということを分かっていただければと思います。
なので単純に「節税したいです!!」を伝えられたところで、真っ当な回答を得られる可能性は低いんです。
節税したい気持ちは分かります。
税理士も自分の節税したいですもん。笑
でも、だからこそ必要な情報を共有してくださいね。
上で列挙した質問の全てに細かく答えてもらう必要はないですが、大きなトピック、イベント、計画は大まかには話せるようにしておいていただけると助かります。
歯科医院の節税の特徴
歯科医院が取りうる節税策は多岐に渡ります。
そのなかでも特にビジネスモデルや制度上、特徴的な節税策を共有していきます。
合わせて、なぜ前章の会話が重要なのかも話していこうかと。
概算経費の特例
たとえば概算経費の特例。
通常経費は発生した実額を集計する必要があるのですが、この特例を使うと概算の金額を使うことができます。
経費は多ければ多いほど節税できるので、実額<概算額なら節税できることになるんですね。
この特例には要件がありまして、
- 社会保険診療報酬が年間5,000万円以下
- (自費診療含めた)総収入金額の合計額が7,000万円以下
の両方を満たしている必要があります。
だからこれまでの状況とこれからの予測(着地予測)が節税判断に必要になってきます。
上の2つのラインギリギリになりそうだったら、概算経費の特例を使ったほうがいいのかどうか、それによって売上目標も変わってきますよね。
消費税の計算方法の選択
消費税の課税事業者になると自由診療や物販の売上にかかる消費税を納める義務が出てきますが、消費税の計算方法はいくつか選択できます(保険診療は消費税非課税です)。
どういう計算方法があるかという話は別の機会に委ねるとして、厄介なのはその選択には事前の届出が必要なケースが多いということ。
要は、来年の状況を見極めて「こっちの計算方法にしたほうが節税になりそう」ということを今年の年末までに見極めておかないといけないということです。
だから将来の予測が必要になってきます。
消費税の計算方法の違いで納税額が百万円単位で変わってくることも全然ありえるのが怖いところで(もちろん取引内容や規模にもよりますが)。
あ、そうそう。
消費税の話でいうと、保険診療収入と自由診療収入の割合が変わりそう、もしくは今後変えていく計画があるなら早めに顧問税理士と共有しておいてください。
これも消費税の計算方法の選択に大きく関わってくるので。
人件費関連の節税
歯科医院の経営モデル上、固定費の割合を大きく占めるのが人件費(勤務医さんやスタッフさんへのお給料)です。
粗利(売上から変動費を引いた金額)の50%が人件費と言われるほどで。
で、人件費が主役になる節税があります。
これが賃上げ促進税制と呼ばれるもので、ざっくりいうと人件費が去年より一定割合以上増えていたら税金を減らしますよ、という特例です。
なので、たとえば年2回の賞与がある場合に、少し支給額を上乗せしたらこの一定割合以上の要件を満たしそうだ、というシミュレーションができれば、上乗せするかの判断ができるということになります。
せっかく賞与を支給するなら、スタッフさんだけではなく、経営者もメリットが欲しいじゃないですか。
なので人件費の予測や計画も必要になってきます。
場合によっては、スタッフさんの採用計画の時期も考えたほうがいいこともあります。
設備投資関連の節税
耳タコだと思いますが、歯科医院の医療機器は高いですよね。
ただ、だからこそ設備投資に関連する節税効果も大きくなる傾向にあります。
その一つが中小企業投資促進税制です。
医療器具備品は対象になる機械及び装置ではなく、器具備品扱いになって対象にならないことがほとんどですが、一部ソフトウェア(電子カルテ、レセコンなど)は対象になる可能性は高いですね。
さらには節税の方法も2つ種類あって、これもどちらかを選択できます。
専門用語を使ってしまうと、特別償却と税額控除の2パターンが用意されているのですが、どちらが効果が高いかは購入年度やそれ以降の年度の業績予測で結果が変わってしまうことがあります。
なのでこれからの予測を把握し、税理士と共有しておくことは不可欠なんです。
と、ここまで4つの視点から歯科医院の節税のポイントを話してきましたが、もちろんこれだけではありません。
代表的なものでいうと、医療法人化、MS法人の活用、小規模企業共済、専従者給与などがありますよね。
ですが、どれを使うにしても視点は同じです。
現状把握と未来予想をベースに節税策を立てていきましょう。
現状把握と未来予想を
ここまで読んでいただいたらわかるとおり、本当に必要な節税提案を受けるためには情報提供が必要になります。
で、情報提供だからと言って特段畏まる必要はなく、会話をすればいいのです。
しかも実際に取引やイベントが起こる前、つまり事前に会話をして情報共有しておくことがミソです。
僕は納税者である経営者が節税策を網羅的に学習する必要も、記憶する必要もないと思っています。
その代わり、節税のキーファクターになる話題を税理士に共有することのほうがずっと大切です。
たとえば先ほどの質問集でいうと、
- いまどんな状況なの?
▶︎スタッフが足りない - これまで何をしてきたの?
▶︎求人サイトや紹介会社にフィーを払ってきた - これから予測はどんな感じ?
▶︎今後毎月1人ずつ増員する予定 - これから何をしたいの?
▶︎スタッフのベースアップもしたい - これから何が必要なの?
▶︎2年後に勤務医さんを雇いたい。あ、そろそろマイクロスコープも壊れそうかも。
といった会話ですね。
この現状と予測の情報をもとに、税理士が節税のアンテナを立てられればいいのかなと。
そういう意味で、顧問税理士を付けているならそれくらいの会話ができる関係性が必要になります。
ぜひ少しでも信頼のおける税理士を見つけていただければと思います。
あ、そうそう。
共有する予測や計画は比較的抽象度が高めなものでも大丈夫です。
むしろ抽象的でもいいのでお話いただければと。
数年後に分院展開したいとか、違う事業もしてみたいなど。
抽象的な話題というのは、こんなふうに比較的大きな動きを予定されていることが多いですが、それこそ事前に検討すべきことはたくさんあります。
事業の形態が違えばかかってくる税金も変わってくるからです。
ぜひ次回から顧問税理士との会話を楽しんでくださいね。


