【note】税理士のアタマの中

歯科開業の融資で失敗する院長がやりがちなこと|資金不足を防ぐために

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こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。

今回も開業融資のコツを書いていきます。

金融機関とは融資条件の交渉も重要ですが、それ同じくらいスピード感が必要です。

それだけに、融資の計画が狂ったときのダメージは甚大です。

避けなければいけないのは、金融機関の審査の内諾が出たあとに「やっぱり資金が足りない」と気づくケースです。

融資額の増額をお願いすることになりますが、これが開業計画全体を大きく狂わせる引き金になることがあります。

結論から言います。

銀行は融資額の増額による再審査を非常に嫌がります。

理由は単純で、相当な時間がかかるからです。

内装や医療機器の見積書を揃え、事業計画書を作成し、担当者との面談を重ねながら、銀行内部の稟議を通していく。通常、このプロセスだけで数週間から数ヶ月かかることも珍しくありません。

その状態から増額の再審査をお願いすると、銀行内部の審査がゼロからやり直しになることがほとんどです。

その結果、何が起きるか。時系列で整理すると、こうなります。

着金が間に合わない→内装工事の着工が遅れる→工期がずれ込む→保健所への開設届の提出が遅れる→厚生局への保険医療機関指定申請も遅れる→保険診療の開始が後ろ倒しになる

この連鎖が起きても、すでに採用が決まっているスタッフへの給与支払は待ってくれません。給与はもちろん、内覧会の広告費も、リース料も、固定費はすでに支払い始めています。収入がゼロの状態で、支出だけが積み上がっていく。

開業初月から、想定外の赤字を抱えてスタートすることになります。

内装や医療機器の費用については、実はそれほど問題にはなりません。見積りの段階で少し多めの金額(グレードが良いもの)を金融機関に提出しておき、最終見積段階で調整するという方法です。最初からバッファを持たせておけば、多少のコスト変動には耐えられます。

しかし、本当に怖いのは運転資金です。 運転資金には「見積書」が存在しません。そこに、最大の落とし穴があります。

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目次

ポイントは予測しずらい運転資金

設備資金といわれる内装工事や医療機器に関しては、業者から見積書が出るので金額が明確です。
銀行もその数字を確認できます。

一方、運転資金には見積書がありません。なぜなら、必要な運転資金の金額は、その医院の診療スタイル・スタッフ構成・立地・患者数の立ち上がり速度によって、まったく変わってくるからです。

たとえば同じ50坪のクリニックでも、歯科衛生士を多く採用して予防歯科に注力する医院と、院長一人でスタートして自費治療を中心に運営する医院とでは、毎月の固定費がまったく異なります。

業者さんの事業計画書で算出される「標準的な運転資金の目安」は、あくまで参考値にすぎません。

この段階で見誤ると、深刻な事態が起きます。融資額が不足したまま開業を迎え、不足分を自己資金で補うことになります。

「開業後の生活費として手元に残しておくつもりだった資金」まで医院の運転資金に充てざるを得なくなる。院長先生ご自身の生活費が底をついてくる。家族との生活が、じわじわと苦しくなっていきます。

そうすると、開業後に本当は必要なのにお金がないから断念せざるを得ない投資が発生してきてしまいます

実はこういう事態は現場の士気を下げます。
せっかく華やかにオープンしたのに、出だしから院長先生の頭のなかは資金繰りでいっぱいなのは、院長先生も辛いだろうし、それは雰囲気としてスタッフさんにも伝わります。

運転資金を正確にピックアップする方法

では、歯科医院における「運転資金」とは具体的に何を指すのでしょうか。大きく3つに分けて考えます。

① 医療原価

歯科特有のコストがここに集中します。歯科材料費(印象材・金属・コンポジットレジン・ワイヤーなど)、薬品費、そして委託技工費です。

保険診療中心の医院か、自由診療(インプラント・矯正・審美歯科)を取り入れるかによって、医療原価の構成は大きく変わります。自由診療比率が高い医院では材料のグレードも上がると思います。

② 人件費

運転資金の中で、もっとも金額が大きくなるのが人件費です。歯科衛生士・歯科助手・受付スタッフの給与に加え、社会保険料(雇用保険・健康保険・厚生年金)の事業主負担分も含まれます。

スタッフの人数と給与水準によって、月々の人件費は数十万円単位で変わります。採用計画は、運転資金の見積もりと一体で考えることが欠かせません。

③ その他固定費

毎月必ず発生するコストです。衛生費(グローブ・マスク・滅菌関連消耗品など感染対策にかかる費用)、通信費(電話・インターネット・レセプトコンピュータの通信費)、研修費、旅費交通費、消耗品費、水道光熱費、医療機器の保守料(メーカーとの保守契約)、リース代(医療機器・コピー機・レセコンなど)が主な項目です。

これらは一見小さく見えますが、合計すると月に数十万円になることも珍しくありません。特に開業当初は患者数が少ないため、固定費に対して収入が少ない状態が続きます。

これらすべてを合計し、6ヶ月分を目安に見積もることがポイントです。なぜ6ヶ月か。

開業直後は患者数がゼロからのスタートで、医業収入が安定するまでには一定の時間がかかるからです。3ヶ月では心許なく、12ヶ月分を全額融資で賄うのは軌道に乗るスピードが遅すぎると見られることが多いです。

これらを踏まえた全体的な事業計画書の数値の組み立て方についてはこちらの記事で説明しています。合わせて読んでみてください。

見積もった金額が相場よりズレている気がするのはいいのか?

運転資金と設備資金の両方に言えることですが、試算してみると「業者さんの見積りより金額が大きくなった」、逆に「当初の想定より小さくなった」という結果になることはあります。

「このずれは、あるべきズレなのか。それとも、そうでないのか。」

これを分析することが最重要ポイントです。

あるべきズレとは何か

たとえば、院長先生が「予防歯科に力を入れたい」「一人の患者さんにじっくり時間をかけた診療をしたい」という医療方針をお持ちの場合、歯科衛生士を多めに採用することになります。標準的な歯科医院がユニット3台、歯科衛生士さん2名でスタートするところを、3〜4名採用するケースも珍しくありません。

その分、人件費は当然高くなります。月々の固定費が、同規模の医院と比べて数十万円多くなることもあります。

しかしこれは「ズレ」ではなく、院長先生の診療スタイルを実現するための意図した投資です。

開業前から明確なコンセプトがある以上、それを支えるコスト構造になっていることは、むしろ正しい状態です。

こうしたケースでは、運転資金の見積もりが標準より多くなっても問題ありません。むしろその金額をしっかり融資に織り込み、金融機関に対して「なぜこの人件費が必要なのか」を説明できるよう準備することが重要です。

おかしいズレの見分け方と注意点

一方で、特筆すべき診療方針や特色があるわけでもないのに、標準と大幅に差がある場合は要注意です。

採用計画が曖昧なまま多めに見積もっていたり、固定費の項目を重複して計上していたりするケースがあります。また、医療原価の見積りやユニット稼働率の予測が現実とかけ離れていることもあります。

差が出ていても、金融機関が想定している運転資金のほうが大きければそれほど問題になることはありません。

問題はその逆です。

冒頭でもお伝えしましたが、増額の再審査は時間がかかります。結果、オープン日にも影響する事態になりかねません。

また、運転資金が足りない分、設備資金を減らして運転資金の融資に回す、という提案をさせたとしても安易に乗っからないでください

融資総額は同じかもしれませんが、設備資金と運転資金では、返済期間も利率も変わってきますので。

設備資金で必要な金額はこれ、運転資金で必要な金額はこれ、と明確に主張することを意識してください。

根拠がないと足元を見られることが多い

融資額が足りないという事態は、金融機関を説得できていないということになります。

この場合、言葉は良くないのですが、金融機関側もよく分かっていないからリスクを取りたくないという心理が働いている可能性もあります。

要は、目の前にいる歯科医院の院長さんがいくら必要なのか明確には分からないので、金融機関にとって保守的な審査結果になるということです

その条件で金融機関内で内諾が出てしまったら時間ロスになる、というのは冒頭からお伝えしているとおりで。

いや、金融機関も悪気はないかもしれません。

でもみなさんが想像する以上に金融機関は歯科医院のことをよく分かっていません。

担当したことがあると言っても、数件だったらデータとしては心許ないし、数年前の開業データが今の物価上昇の局面で参考になるかというと、そうとも言い切れないかと思います。

なので繰り返しになりますが、足りない金額で審査がどんどん進んでしまう前に、設備資金で必要な金額はこれ、運転資金で必要な金額はこれ、と収支計画で根拠を見せながら伝えるようにしましょう。

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