【note】税理士のアタマの中

歯科開業の求人前に決めるべき労務条件と資金繰りの関係

  • URLをコピーしました!

こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。

以前、歯科開業の人件費を決める9つのポイントを書いた記事を出しました。

網羅的な内容にはなっているのですが、考えることが9つもあると難しく感じることもあるかと思います。

いままで会計には携わってこなかった方は特に。

そんな方に向けて、この記事では中心となる3つのポイントにフォーカスしていきます。

この記事を読んでさらに応用的な内容にステップアップしたい方は、上記の記事も合わせて読んでみてくださいね。

あ、でもそれぞれの記事の目的は共通しているので、ここにも再掲しておきます。

1つは、条件を先に決めておくと収支計画が立てやすく、融資交渉でも説得力のある資料になるからです。
もう1つは、後から「言った・言っていない」の労務トラブルを防げるからです。

特に、せっかく採用できたスタッフが条件の認識ミスですぐに退職してしまう、というのは本当にもったいないです。

採用にかけた物的・金銭的コストが無駄になるということは、開業直後の損益にも直撃するからです。
開業記念で採用できたはずの大事なスタッフと、最初からギクシャクした関係になってしまうのは避けたいところかと。

ということで、開業時の労働条件を決める重要性を確認できたところで、本題に入っていきます。

個別相談はこちらから
目次

基本給・資格手当・賞与の三点セットを決める

まず基礎になるのが、この三点セットです。
ここが決まらないと、収支計画の人件費欄が「仮置き」のままになってしまいます。早めに確定させましょう。

基本給と資格手当の関係

歯科医院では、歯科衛生士・保育士・管理栄養士などの資格を持つスタッフに対して、資格手当を基本給とは別に設定することが多いです。

特に保育士さんや管理栄養士さんの求人は、在職している医院の割合が少ないため、医院のコンセプトを外部に対して発信することにもつながります。

当然ですが、人件費の試算は「基本給+資格手当」の合計で考える必要があります。

ちなみに、リーダーなど役職に応じて役職手当を設定する医院さんもいらっしゃいます。
設定する場合は資格手当と同様に考えてみてください。

賞与の算定基礎に何を含めるか

賞与を計算するとき、算定基礎を「基本給のみ」にするのか、「基本給+資格手当」にするのかで、賞与の総額がかなり変わります。

たとえば基本給20万円・資格手当7万円のスタッフに、夏と冬の年2回・各1ヶ月分の賞与を支給するケースで考えてみます。

  • 基本給のみ算定:賞与は1回あたり20万円 → 年間40万円
  • 基本給+資格手当算定:賞与は1回あたり27万円 → 年間54万円

1人あたり年間14万円の差です。スタッフが5人いれば年間70万円、10人いれば140万円の差になります。
しかもこれは資格手当部分だけで、です。現実はこれに社会保険料負担もプラスされます。

さらに資格手当を複数設定している場合はより影響が大きくなるので、賞与の算定基礎は必ず事前に決めておきましょう。

スタッフ側からすれば、賞与の算定方法は非常に気になるポイントです。
後々のトラブルを避けるために面接時に伝えておいてもいいでしょう。

賞与は何回・何ヶ月分?

賞与を年2回にするか年3回にするか、何ヶ月分を支給するかも明確に決めておきましょう。「業績次第で変動あり」という形にする場合も、その旨を明示しておく必要があります。

ここが曖昧なままだと、スタッフ側が「もっともらえると思っていた」という期待外れにつながります。開業したばかりの時期に、こういった不満が積み重なるのは避けたいところです。

基本給・資格手当(役職手当)・賞与の三点セットは、収支計画に必ず織り込んでおくべき必須の決定事項です。

年間休日(診療カレンダー)を確定させる

これは見落としがちですが、資金繰りに直結する大事なポイントです。

「月22日稼働」のつもりが18日になることがある

収支計画を立てるとき、休診日の設定にもよりますが「1ヶ月あたり22日稼働」で試算することがあります。

ところが実際には、ゴールデンウィーク・お盆休み・シルバーウィーク・年末年始の連休が重なる月があります。そういった月は、診療日数が平気で18日になることがあります。4日の減少です。

1日20人来院、平均点数1,000点(=平均単価10,000円)とすると、1日の医業収入は約20万円です。

そうすると、20万円×4日=80万円の収入減です。

毎月の融資返済額(元金+利息)がちょうどこれくらいになっている医院さんも珍しくありません。つまり、診療カレンダーによっては融資コスト分の収入がまるまるなくなる月が出てくるということです。

これは極端な例に見えるかもしれませんが、実際の開業後の資金繰りでは十分起こりうる話です。「思ったより手元のお金が減った」という現象はこうやって発生していくのです。

院長先生の学会・研修による休診日も要注意

連休だけではありません。院長先生が学会や研修で休診にする日が毎年決まっているなら、それも収支計画に最初から織り込んでおきましょう。

年間で見れば数日かもしれませんが、積み重なると損益への影響は小さくありません。「今月は研修があったから売上が少なかった」では、計画との乖離が毎回出てしまいます。最初からわかっている休診日は、計画に反映しておくのが基本です。

人件費は休日数に関係なく発生する

ここが最も大切なポイントです。

基本給や資格手当は、休日が何日あっても変わらず発生します。

診療日が少なくなって医業収入が減っても、スタッフへの人件費はそのまま。この非対称性が、休診日の多い月の資金繰りを苦しくします。

だからこそ、診療カレンダーは収支計画と切り離すことができません。開業前の段階で、年間の診療日数をできるだけ正確に把握しておくことを強くおすすめします。

「だいたいこれくらい」ではなく、実際のに開業後一年のカレンダーを見ながら月ごとに積み上げていきましょう。

特別手当・特別休暇のルールを決めておく

3つ目は、医院独自の手当・休暇制度についてです。院長先生の方針で任意で設ける「プラスアルファ」の部分です。

特別手当とは何か

「こういう人に働いてほしい」という医院のコンセプトに合わせて、医院独自の手当を設定するケースがあります。

例としては、育児中や介護中のスタッフに対して該当家族人数に応じた手当を出す、というものです。「家族を抱えながら頑張っているスタッフを支えたい」という思いからくるもので、医院の文化や価値観を表す制度でもあります。

また、賞与の算定基礎に含めるかどうかも事前に決めておく必要があります。資格手当と同じ話ですね。

特別休暇をどう設計するか

育児や介護で休みが必要なスタッフに対して、法定の有給休暇とは別に有給の特別休暇制度を設けるかどうかも決めておきたいところです。

直接的な人件費への影響は大きくありませんが、ユニット稼働率や必要なスタッフ数を考えるうえで無視できない変数です。たとえば育休取得中のスタッフが出た場合に備えて、人員をどう補うか(増やすのかそのままの人数で運営するのか)という視点も必要になります。

不公平感をどう防ぐか

ここでひとつ注意点が。

特別手当も特別休暇も、該当するスタッフとしないスタッフの間で不公平感が出やすいのが難しいところです。

育児中のスタッフには手当が出るけれど、独身のスタッフには何もない、という状況は、制度の意図がよくても職場の雰囲気に影響することがあります。

制度として設計するときは、社会保険労務士さんと一緒にバランスのとれたルールを考えることをおすすめします。「こういう人を大切にしたい」という院長先生の思いを、職場全体が納得できる形に落とし込みましょう。

正確な人件費計画は融資交渉にも有効

今回お伝えした3つの決め事を整理します。

決め事資金繰りへの影響
①基本給・資格手当・賞与年間人件費の総額が変わる
②診療カレンダー(年間休日)医業収入の見込み額が変わる
③特別手当・特別休暇年間の人件費と稼働率の試算に影響する

こうやって収支計画の正確性が増せば、融資交渉にも役立ちます。

正確な人件費と医業収入の見込みが立てられれば、融資交渉でも説得力のある計画を組み立てることができるからです。

開業融資の審査では、計画の精度が評価に影響することがあるので、曖昧な部分を残さないことが大切です。

シェアはこちらから!
  • URLをコピーしました!
目次