自社に資金繰り表はありますか?
あったとして、適切に運用されていますか?
結論からいうと、資金繰り表は必ず作るべきです。
なぜなら、経営者を守る安心材料になるからです。
資金繰り表とは?
まずは、資金繰り表がいったいどういうもので、どういう役割を果たすのかを解説していきます。
資金繰り表の全体像
端的にいえば、お金の出入りと残高を記録した書類です。
子どもの頃、おこづかい帳なるものをつくっていませんでしたか?
若しくは、大人になってから家計のやりくりのために家計簿を作成していませんか?
感覚的に、資金繰り表とこれらは似ています。
見た目はこのような様式です。
青色で、日常的な営業活動によるお金の出入りを記録
灰色で、事業に必要なモノを買ったり売ったりすることによるお金の出入りを記録
緑色で、金融機関からの借入や返済をすることによるお金の出入りを記録
します。
おこづかい帳や家計簿は、
横軸が残高→入金→出金→残高の順番のものが多いですが、これを縦軸にしたものが上の資金繰り表です。
キャッシュフロー計算書との違いは?
資金繰り表に似た書類に、キャッシュフロー計算書というものがあります。
キャッシュフロー計算書もお金の流れを見える化した書類です。
資金繰り表との大きな違いは誰向けの書類であるか、という点です。
資金繰り表は、経営者が資金管理をするための書類です。そして、特に作成が義務づけられているわけではありません。
キャッシュフロー計算書は、外部の人間(たとえば投資家)が、企業がどのような活動でお金を増やしたり減らしたりしているかを把握するための書類です。したがって、金融商品取引法という法律に基づき、上場企業は作成する義務があります。
この違いからわかるとおり、キャッシュフロー計算書はどちらかというと専門知識がある人向けです。
より具体的にいえば、簿記の知識があり、貸借対照表や損益計算書の構成や役割を理解している人がみて活用できる仕様になっています。
したがって、一般的には、中小企業の経営者は資金繰り表を作成してみることをおススメします。
というか、資金繰り表は必須であるといえます。
その理由を次からお伝えしていきます。
資金繰り表が必要な理由
端的にいえば、「収入や経費の発生」と「お金の流れ」は別だから、です。
経営者にとっては当たり前のことかもしれませんが、重要なことなので敢えて解説します。
ポイントは、決算書や試算表の損益計算書が黒字だろうが赤字だろうが、お金の増減は把握できないということです。
なぜなら、掛け売上、掛け支払という商慣習があるからです。
たとえば、商品を1億円売って、代金の回収が1年後の場合、損益計算書には売った瞬間に1億円の売上がたちます。
そして、仮に経費がゼロだったとした場合、損益計算書には1億円の利益が計上されてることになります。
でも、この時点ではお金は1円も増えていません。
いわゆる、利益はあるのにお金はない状態です。
経費の場合も同様です。
たとえば、中小企業のなかには、資金繰りが苦しくなったときに、役員報酬の支払いを一時的に止めるケースがあります。
これが良いかどうかは別として、損益計算書に計上される役員報酬の金額は変わりません。
なぜなら、支払いを一時的に止めただけであり、役員は従前と同じように働いていて、その対価である人件費が発生していること自体に変わりはないからです。
このように、中小企業では、経営者の意思決定次第で、お金の出入りのタイミングを変えやすいです。
にもかかわらず、資金繰り表を作成していなければ資金管理があやふやになるのは避けられません。
だからこそ、資金繰り表は必須ツールといえます。
資金繰り表の種類
資金繰り表は、「期間」と「時点」という2種類の要素を変えることで、様々な使い方ができます。
「期間」を変える
資金繰り表は3種類の「期間」が異なるバージョンがあります。
・「年次」資金繰り表
・「月次」資金繰り表
・「日次」資金繰り表
です。
最初に画像を添付したた資金繰り表は、「月次」の資金繰り表です。
したがって、横軸には1ヶ月ごとの列が設けられています。
「年次」であれば、1列は1年ごとになります。
「日次」は1列1日にすると、列の数が多くなり分かりづらくなるかもしれません。
そういうときは、まさにおこづかい帳や家計簿と同じように横軸に「入金」欄と「出金」欄をもってくるのがおススメです。
「日次」は特に、小売業などのBtoCの業種では導入する価値はあると思います。
なぜなら、毎日のレジの現金実査の過程で作ることができるからです。
個人的には「年次」と「月次」は必須だと思います。
なぜなら、もし自己資金だけは足りずに融資を受けることになるときには、数か月の準備期間が必要だからです。
「日次」は特に資金がショートしそうで日々の管理が重要な局面の場合には必要になってくると考えています。
「時点」変える
「時点」を変えるとは、実績の資金繰り表だけではなく、予測の資金繰り表を作るということです。
具体的には、「年次」なら将来3年間、「月次」なら1年間(12か月分)の予測を作ります。
そして、実績と対比することで資金管理能力アップが期待できます。
「月次」の場合は予測の欄に向こう12か月分の予測値を入れ、1月ごとに実績値に更新し、その差を分析していきます。
「日次」では、さすがに予測は煩雑で現実的でないので、そこまではしなくていいでしょう。
その代わり、実績をいかに正確に管理するかがポイントになります。
まとめ
業績の管理とお金の管理は別です。
お金の管理は資金繰り表でしっかりと対応しましょう。