【note】フリーランスのお金と暮らしの話

【フリーランスはこの7つ!】令和6年税制改正大綱のまとめ速報

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こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

昨日12月14日に、令和6年度税制改正大綱が発表されました。

税制改正大綱ってなに?という方のためにざっくりお伝えすると、「来年以降税制をこう変えていきますよ」という与党の基本方針です。

これを踏まえて、翌年1月から国会で法律を変える審議をして、だいたい同年4月くらいに成立します。

なので、税制改正大綱に基づいて色々な優遇税制や特別措置、新たな制限ルールが作られていきます。

ということで、税制の今後の重要なトレンドになるので、さらっとメインどころだけでも知っておいていただければと。

目次

この記事を読んで欲しい人

タイトルにもあるとおり、この記事は個人事業主やひとり社長の形態でビジネスをしている、いわゆるフリーランスを対象にしています

個人事業主であれば事業所得や不動産所得として毎年確定申告している方、ひとり社長であれば合同会社や株式会社を従業員を雇うことなく(若しくは数人で)運営し、自分は役員給与を受け取っている方、が対象です。

というのも、改正の項目がたくさんあり過ぎるので、属性別に関係が深い項目に絞ってお伝えしたほうが伝わりやすいと思ったからです。

網羅的な改正内容については、また別の方法で解説します。

この記事では、対象者を絞って、分かりやすさとシンプルを優先します

令和6年税制改正大綱のコンセプト

まず、税制改正大綱では冒頭にその年の基本的な考え方が表明されます。

今年は、

  • デフレ脱却(インフレ)への対応
  • 賃金アップの実現
  • 少子化対策(子育て支援)
  • グローバル化への対応

です。

それぞれ、目的を実現するための見直しが盛り込まれているわけですが、早速、その改正内容を詳しくみていきたいと思います。

全部で7項目です(今後増えるかも)

①:定額減税

今年の目玉はこちらです。

ほぼすべての国民が対象になる減税政策になります。

ただ、あとで詳しく説明しますが、フリーランスはビジネス形態によって減税方法が異なります。

対象者

日本の居住者で、令和6年分の合計所得金額1,805万円以下の人が対象になります。

合計所得金額で判定なので、個人事業主の場合は事業所得(簡単にいうと収入ー経費)、ひとり社長の場合は給与収入から給与所得控除を引いた給与所得を使います

給与収入の目安は2,000万円以下です。

もちろん、このほかに所得があればこれも含めた合計所得金額で判定することになります。

この点、特定口座の上場株式の配当金や譲渡所得を申告するか、申告不要にするかで合計所得金額が変わって来るので、ギリギリのラインの方はこの点に注意が必要かと思います。

減税額

減税額はこのようになっています。

税目/計算対象本人分同一生計配偶者・扶養親族
所得税3万円3万円/1人
住民税1万円1万円/1人

たとえば、フリーランス(夫)が専業主婦の妻と2人の子どもを扶養している場合は、

・夫本人分の4万円
・妻と子2人の3人分の12万円

の合計16万円の減税を受けることができます。

ちなみに、共働き世帯で、夫婦のうち所得が少ない方が同一生計配偶者に該当しない場合(給与収入が103万円超の場合など)は、その分減税額は小さくなります。

減税方法

実務上、一番厄介なのはここです。

税制改正大綱では、①給与所得者の減税方法、②公的年金受給者の減税方法、③事業所得者の減税方法に分けて記載されていますが、この記事はフリーランスの方を対象にしているので、①と③にフォーカスを当てていきます。

フリーランスのうち、ひとり社長は①、個人事業主は③の取扱いになります。

表にするとこのようになります。

税目/所得区分給与所得者(ひとり社長)事業所得者(個人事業主)
所得税令和6年6月以降の役員給与に係る源泉徴収税額から順次控除
・扶養内容に異動等が生じた場合は年末調整で調整
・源泉徴収票に控除額等を記載
・最終的には年末調整で再計算、控除
令和6年分の第1期(7月)予定納税から順次控除(控除しきれない金額は第2期(11月)で控除)
・同一生計配偶者・扶養親族の減額は申請が必要
・減額申請の期限が延長される
・第1期(7月)予定納税の納期限が2か月延長される
・最終的には確定申告で再計算、控除
住民税・令和6年6月の役員給与に係る住民税の源泉徴収はなし
・その代わり減税分を控除した住民税額の11分の1を7月から翌5月まで徴収する
・徴収額は市町村が計算してくれる
令和6年分の第1期納付額から順次控除(控除しきれない金額は第2期以降で控除)
・徴収額は市町村が計算してくれる

【気づき点】
法人化しているひとり社長フリーランスは、対応するシステムにアップデートしないと所得税の源泉徴収額を間違うでしょう。

これに関しては、いまシステムベンダーさんが一番驚き、急いで対応しているところだと思います。

個人事業主の場合は、所得税の同一生計配偶者・扶養親族の減額は申請が必要という点がポイントかと。

いちいち申請するのはめんどくさいですよね。

総じてまだ明らかになっていないのは、減税分引き切れない人達への救済はどうするのか、ということ

事業所得者でも予定納税義務がない方もいますし、令和6年が赤字の人だっているはずです。

でもこの制度は令和6年で終わりなので、令和7年以降に救済される余地がありません。

それなら現金給付のほうがシンプルで公平なのでは?と思うわけです。

②:住宅ローン控除の拡充(子育て支援)

フリーランスのビジネスとは関係ないですが、持ち家がある、もしくは、持ち家を検討しているフリーランスにとっては関係してくる改正です。

対象者

対象者は、

  • 年齢40歳未満で、配偶者がいる人
  • 年齢40歳以上で、年齢40歳未満の配偶者がいる人
  • 年齢19歳未満の扶養親族がいる人

です。

お分かりのとおり、子育て世帯向けの拡充です

これに加えて令和6年1月1日から同年12月31日までに住むことが要件です。

合計所得金額2,000万円以下など、それ以外の要件は従来の制度を引き継ぎます。

拡充案

今回の拡充案は、もともと令和6年から縮小が決まっていた借入限度額の上限について、子育て世帯に対しては据え置きしてあげましょう、という改正です。

住宅の区分縮小後子育て世帯特例
認定住宅4,500万円5,000万円
ZEH水準省エネ住宅3,500万円4,500万円
省エネ基準適合住宅3,000万円4,000万円

このように、500万円~1,000万円、住宅ローン控除の対象になる限度額が大きくなるので、その分税額控除は大きくなります。

【気づき点】
この制度、子育て世帯で持ち家がある家庭しか恩恵を受けることができないのですが、賃貸の家庭への支援は考えられているのか疑問です。

③:住宅リフォーム税制の拡充(子育て支援)

子育て世帯が持ち家を子育て用にリフォームしやすいように、支出した工事費用の一部を所得税額から控除する制度が整備されました。

対象者

対象者は、②で紹介した要件と同じです。

対象リフォーム

子育て世帯が子育てしやすいようにする工事が対象で、大綱ではこのように列挙されています。

また、令和6年4月1日~令和6年12月31日までの間の工事が対象になります。

  • 住宅内における子どもの事故を防止するための工事
  • 対面式キッチンへの交換工事
  • 開口部の防犯性を高める工事
  • 収納設備を増設する工事
  • 開口部・界壁・床の防音性を高める工事
  • 間取り変更工事(一定のものに限る)

控除額

対応改修工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%に相当する金額を所得税から控除できることになります。

つまり、控除額はMAXで25万円、ということになりますね。

④:生命保険料控除の拡充(子育て支援)

実施時期が明らかになっていないので、大綱ではあまり詳しく書かれていません。

が、所得控除の一種である生命保険料控除について、子育て世帯が支払う一定の保険料の控除枠が広がるようです。

⑤:倒産防止共済の再契約の損金算入制限

個人事業主であれ、ひとり社長であれ、倒産防止共済(セーフティ共済)に加入している方はいらっしゃるかと。

その名のとおり、この制度は取引先の事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。

で、倒産防止共済の掛金は損金(経費)、解約金は益金(収益)になるわけですが、いままでは解約から再加入までの制限がなかったために、好きな時に損金(経費)益金(収益)を出すことで過度に節税が行われてるケースがありました。

これを問題視しての見直しのようです。

具体的には、解約して再加入する場合、解約してから2年間支払った掛金は損金(経費)にすることができなくなるとのこと。

この見直しは令和6年10月1日以後の解約について適用される予定です。

⑥:交際費の接待飲食費の限度額拡充

この改正は法人化しているひとり社長のみ影響があります

なので、個人事業主は関係ありません。

従来まで、社外との接待交際費で1人5千円以下のものは交際費から除外されてきました。

が、今回の大綱では、飲食費のデフレマインドを払拭するために、除外する金額基準を5千円→1万円に引き上げることとされています。

与党政府のメッセージとしては、「全額経費するから、高い物食べて物価上げてよね」ということでしょうか。

ただまあ、ほとんどのひとり社長は中小企業で、中小企業はもともと経費にできる交際費の800万円の枠があるので、そこまで影響はないといってもいいでしょう。

【気づき点】
個人的には、物価を上げるための5千円→1万円なら、この800万円の枠も同じように引き上げるのが理にかなっているかと思っていますが、ここにメスは入らないようです。

⑦:インボイス制度下の自販機特例の整備

インボイス制度下では、自動販売機やATMの課税仕入れに係るインボイスの保存は不要で、帳簿への一定事項の記載で仕入税額控除が認められています。

ただ、この一定事項として、仕入れの相手方の住所も記載するという摩訶不思議なルールがありました。

自動販売機の住所なんて書けませんよね。

実務上、守るのは無理なルールだったので、もうルール自体見直して、帳簿に住所は書かなくていいようになる、ということのようです。

当たり前といえば当たり前の見直しですね。

まとめ

こうみると、最も影響があるのは、どう考えても①の定額減税ですね

実務上正しく減税分を控除できるのか、という不安はありますが、それ以上に、令和6年のみの適用なので、令和6年で減税分を引き切れない場合はどうするのか、という点は何も明らかにされていません。

加えて、フリーランスが同一生計配偶者や扶養親族を正しくカウントするのもある程度ハードルがあるかと。

その他に説明した見直しも、どれが自分に影響があって、影響がないのかを事前に確かめておいてもらえればと思います。

ビジネスだけではなく、家計に関わる見直しも記載したので、この両面からチェックしてみてください。

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