【note】フリーランスのお金と暮らしの話

士業がchatGPTに勝てること

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こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

chatGPTが出てきたから手続き業務や書類作成が中心の士業の仕事はAIに奪われる、奪われないという論争は毎日のように見聞きします。

ご多分に漏れずこの記事もchatGPTをテーマにしていくのですが、税理士の立場から「重要な仕事だけれども、いまのchatGPTでは対応できない」という部分をお伝えしていこうかと。

ただ、言いたいことはある程度このtweetにまとまっています。

問題なのは、経営者は部下に対して問題提起はするけれども、問題提起をされることが少ない立場だということです。
真正面から質問される機会が少ない立場ともいえます。

ですが、経営者も人間なので自分の考えや行動が合っているか確かめたいはず。

でも、chatGPTは質問ができないんです。
chatGPTの基本的な機能は、人間が質問してchatGPTがそれに答えてくれる、という一方的な言葉のラリーです。

たとえば、人間が「関東のオススメ花火大会を10個教えて」と入力したら、何年何月時点の情報ですが、という前置きのをしつつ、10個列挙してくれます。

が、もし私が同じ質問をされたら、「あなたが思う”オススメ”とはどういうことですか?」とか「絶対に外せない条件は何ですか?」とか「花火大会に行く目的は何ですか?」と聞くと思います。

これが今のchatGPTにはない機能であり、士業(人間)がchatGPTに勝てる要素のひとつです。

端的に言うと、質問力ともいえます

今回はこの質問力が士業の現場で必要になる理由をお伝えしていきます。

目次

質問がなくて失っているもの

経営者は会社という組織のトップであり、最終意思決定権者です。

なので、基本的に「社長、その選択は間違っているんじゃないですか?」という意見を言われない、言われにくい立場だということ。

もちろん、経営者から部下や経営幹部に対して有益なアイデアを求めることはあると思いますが、部下や経営幹部が自主的に社長に意見する文化がない中小企業は多いと思います。

それがいいのかよくないのかは本論ではないので今回は置いておきますが。

要するに、足りないところをタイムリーに指摘される環境に恵まれていない、ということです

経営者は必要なときに、必要な検討をする機会を逃している、ともいえます。

そして、質問といってもいろいろな種類があります。

  • 理由を聞く質問
  • 着眼点を投げる質問
  • 提案を含む質問

この質問の種類は人によって様々な分け方があるとは思いますが、chatGPTはこれらの質問を投げかけることができません。

冒頭の「関東のオススメ花火大会を10個教えて」の質問を例に、順を追って説明していきましょう。

chatGPTが聞けない質問

理由を聞く質問とは、なぜ花火大会に行くのか?、なぜ10個でいいのか?、なぜ関東なのか?、という、なぜを聞く質問です。

これらの質問をすることによって、花火大会に行くのが正解なのか、10個で足りるのか、関東以外の選択肢を探したほうがいいのか、という検討ができますよね。


次の着眼点を投げる質問とは、誰と行くのか?、花火大会と一緒に楽しみたいことはあるか?、いつぐらいの花火大会がいいのか、という質問です。

これらの質問は質問文に出てこないけれども、検討しておいたほうが良いことを確認するきっかけになります。


最後の提案を含む質問とは、いままでの質問を踏まえて、花火大会ではなく水族館に行ったほうが良いのではないか?、○○という目的なら○○で開催される花火大会はどうか?、という提案型の質問です。


chatGPTは与えられた質問に対して完璧な回答をする能力に長けていますが、自ら新たな提案をすることはできません。

まあ、これらを網羅的に聞くようになったら本腰を入れて人間の存在意義を考えなくてもはならなくなりますが。

chatGPTが苦手な”タイミング”

仮に、chatGPTがこのような質問をすることができたとしても、質問のタイミングがずれたら意味がありません。

要するに、先回りして適切なタイミングで検討のきっかけを与えてあげられるかどうかが重要、だということです。

「関東のオススメ花火大会を10個教えて」の質問も、いま検討すべきなのか、もっと早く検討すべきだったのか、ということはchatGPTは知る余地がありません。

なぜなら、chatGPTは質問者が質問を入力してはじめて考え始めるからです。

人間も基本的には質問がきっかけで考え始めますが、その前に質問者との雑談で花火大会や夏のイベントについて興味があるような話をしていれば、

「そういえば、花火大会に行きたいって言ってましたけど、もう行く場所決まったんですか?」

とタイムリーに話を振ることができるのが、人間同士の会話の醍醐味ではないかと思います。


実は、このタイミングというのは士業業界にとってはかなり重要で。

というのも、手続きには基本的に期限があるからです。

税理士でいうと、書類を期限までに出しておかないと、ムダな税金を払うことになったり、還付される税金をもらえないことになったりします。

経営者(お客さん)が不利益を被ることになるということです。

でも、それは事前に経営者から、「建物を買う予定がある」とか「新しい事業を始める」とか、そういった情報を把握していれば問題ありません。

裏を返せば、税理士への情報の事前共有は非常に大切だということです。

ただし、出しゃばりに注意

ただ、気をつけなければいけないのは、求められていないのに質問をするパターンです。

質問をする側が”良かれと思って”質問しても、質問される側はありがた迷惑に感じてしまう可能性に注意しなければいけません。

この点、chatGPTは質問しないと返事しないので、質問する側は返事をもらう姿勢ができている状態で質問することになります。

さらに、chatGPTは聞かれていないことには返事できないので、質問する側が求めていない情報を提供することもありません。

ここが対人間同士の難しさであり、良さでもあるのですが、相手が経営者であればなおさら”ありがた迷惑”にならないように気にかける必要があると思っています。


その理由は明確で、基本的に経営者の方は他人にとやかく言われたくないから組織のトップに立って陣頭指揮を執っているからです。

いや、意見を言うのではなくで、質問をするのでも気を使わないといけないのか、と感じる方もいるかもしれませんが、私はそこまで気にしなければいけないくらい繊細なことだと思っています。

意見ではなく質問であっても、仮にその質問が突っ込まれたくない質問だったら気を害してしまうことになりますし。


でも、経営の課題を早めに検討したり、検討漏れがないかを確認するためには質問するしかないので、質問は必須です。

だからこそ、聞き方もそうですが、関係性の構築が大切になってきます。

構築していく過程では様子をみて小さな質問のジャブを打ちながら、経営者のほうからアドバイスを求めるような関係性を醸成したいところです。


ただ、この関係性もchatGPTにはできないことなので、むしろこれが人間の士業が相対する意義だと考えています。

chatGPTの質問がたとえ的確であったとしても、機械に対して本音で答えられるかと考えると、難しいところがあるはずです。

まとめ

今回は、chatGPTにはできない質問について話してきました。
もちろん、データ処理はAIに任せた方がいいですが、問題を引き出す質問の力は人間同士の会話からしか生まれません。

  • 経営者は検討のきっかけになる質問を受けることが少ない立場
  • chatGPTは質問を適時適切にできない
  • 人間の士業であっても、特に経営者への質問の仕方には気を配るべきであり、関係性の構築が重要

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