こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。
近頃は生産性や高単価化という言葉をよく目にします。
これ自体は望ましいことで目指すべきものなのですが、一部の人々のなかで、生産性や高単価化の意味を「楽して稼ぐ」ことだと思われている部分は、少なからずあるかと思います。
実は私もそう勘違いしていた時期があります。
でも、生産性や高単価化ありきで、商品やサービスを作っていても売れません。
それもそのはずで、生産性や高単価化という考えは、商品やサービスを提供する側の都合であり、買って下さるお客様には全く関係がないからです。
定期的に面談させていただいている、製造業の経営者の方はいつもこのように仰っています。
「難しいこと、面倒くさいことを、誠実な対価をもらって誠心誠意やる」
この会社さんは、金属加工業を営んでいらっしゃるのですが、技術的な難易度が高く競合他社が対応できない加工を積極的に受けて業績を伸ばされています。
この難しいことや面倒くさいことは、ある意味、生産性や高単価化と相対します。
でも、これが商売の根本ではないかと思うわけです。
難しいことや面倒くさいことだからこそ、それらを解決して欲しいというニーズが生まれます。
どんな商売でも原点は同じ
このことは、税理士やコンサルタントといった専門家が行う商売においても例外ではありません。
先ほどお話した経営者の方の話を聞いて、私はこのような感想を持ちました。
われわれ税理士が扱う税制は、毎年のように難しくて、かつ、面倒くさくなっています。
インボイス制度がわかりやすい例で、制度が複雑になりますし、経理処理が煩雑になります。
インボイス制度はまさに税理士泣かせなのですが、それと同時に、事業者に泣かせの制度でもあります。
税理士と顧問契約を結んでいなければ事業者自身が対応しなければいけませんし、顧問契約を結んでいてもレシートを従来よりより細かくチェックして保管しなければいけません。
もちろん、インボイス制度に限った話ではありません。
いずれにしろ、このような難しくて面倒くさい問題を解決するために税理士や専門家がいるわけです。
いっぽうで、生産性や高単価化を重視する動きは、税理士業界においても盛んになっています。
実際のところ、税理士に対して高付加価値のコンサルティングノウハウを伝授する講座やセミナーは数多くあります。
このような講座やセミナー自体を否定するわけではないのですが、なかには税理士側の経済的なメリットしか訴えていないものもあります。
問題なのは、それだとコンサルティングを受ける事業者さんの問題解決にはならないことです。
なぜなら、税理士側が儲かるコンテンツであるだけで、事業者さんが困っている難しくて面倒くさい問題を解決するこことに目を向けていないからです。
なので、何かしら商品やサービスを提供するなら、お客様となるべき人が抱える、難しくて面倒くさい問題を解決することが前提にあることが重要です。
そのうえで、自分にしかできないスキルや技術を持っているなら、高い値段を提示しても仕事を依頼してくれるということになります。
要は、この順番を守らないとお客様のニーズをないがしろにする商品やサービスしかできないということです。
「楽して稼げる」が「本当にやりたい」ことになっていないか
先ほど、税理士に対して高付加価値のコンサルティングノウハウを伝授する講座やセミナーが数多くある、ということをお伝えしましたが、私もいくつか受講した経験があります。
その経験のなかで、ビジネスは簡単に上手くいくと勘違いしてしまうことがありました。
「高額報酬が獲得できる」とか「単価アップできる」とか、そういった言葉を真に受けて、その講座を受講すれば事業は軌道に乗る、と思い込んでいた時期があります。
もっというと、「その講座のコンテンツで楽して稼げそうだから、それを本当にやりたいことにしよう」と自分に暗示をかけていたといっても過言ではないような気がします。
つまり、自分が楽して稼げるかどうかが、本当にやりたいことの基準になっていた可能性があるということです。
もちろん、個人の価値観なので、それを良しとてビジネスを展開していくのもありでしょう。
ただ、その考え方だと市場が欲しているか分からない商品やサービスをゴリ押しで売っていくしかありません。
マーケティング的にいうと、直前の下線太字の考え方はプロダクトアウト気味の商品展開の仕方です。
それで上手くいけばいいのですが、少なくともマーケットインでやるよりもハードルは高くなるでしょう。
これは私の実感としてあります。
なので、本当に稼ぐための近道は、楽して稼ごうとすることではなく、難しくて面倒くさい仕事を地道にやっていくことです。
お客様が難しくて面倒くさいと感じることが分かって、それを解決できるのであれば、まさにマーケットインで商品展開できます。
そして究極的には、それが誰にも負けない差別化になるはずです。
「難しくて面倒くさい」仕事を受けるためには
したがって、いかに世間一般の人が「難しくて面倒くさい」と感じる仕事を受けることができるかが、自分自身の収入に関わってくるともいえます。
そして、そのような仕事を受けるためには、人より多くの経験をするか専門的な知識を身に着けるしかありません。
資格が必要なものであればその資格をとることで、仕事を受けられるようになります。
このように、自分自身を磨くことが非常に重要なポイントになってくると考えています。
また、それだけではなく、周りをよく観察することも重要だと日々感じています。
人がどんなことに「難しい」や「面倒くさい」と感じているかを観察することが大切です。
この点で、人がどこにそういう感情を抱いているかということは、さまざまなルートから見つけることができます。
もちろん、人に直接インタビューしてもいいですし、人伝えに聞く噂でもじゅうぶんな市場の声です。
口コミもこれと同じ部類です。
もっと数を広げるならSNSやブログを漁るのが有効でしょう。
たとえば、とある悩みがSNSでトレンドになっていて、たくさんの人がそれと同じ悩みを抱えているなら、反応する投稿が目に付くはずです。
そういった投稿や書き込みを見つけて、市場をリサーチしていくのは効率的なやり方ではないかと思います。
とはいえ、そのリサーチもある程度労力が必要になります。
つまり、世間一般の人々がいつ、どのようなときに「難しくて面倒くさい」と感じるのかを見極めるのも、ある意味「難しくて面倒くさい」ことだったりします。
私も日常的に世の中の「難しくて面倒くさい」情報を探るようにしています。
もし誰にもまだ見つかっていない「難しくて面倒くさい」の領域を探し当てることができたら、それはいわゆるブルーオーシャンなのかもしれません。
まとめ
今回は、世間一般の「難しくて面倒くさい」を仕事にしていこうという話をしてきました。
ちなみにですが、生産性や高単価化を否定しているわけではありませんし、ビジネスをする上では考えなければいけないことではあると思います。
ただ、これらにこだわり過ぎると、そもそもお客様が見つからなかったり、お客様の期待から外れた商品やサービスを提供することになりかねないとは思います。
「難しくて面倒くさい」という声と真摯に向き合って、まっとうな仕事をしていきたいものです。