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【個人事業主注意】インボイスが税務調査に与える影響と対策

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こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

先日、こんなニュースが流れてきました。

国税庁は「個人への税務調査」を積極的に行うと明言…「確定申告しなかった人」への追徴課税は“過去最高額”に【税理士が解説】
→記事本文はこちら
→記事内にある「令和3事務年度における税務調査」はこちら

このなかで、インターネット等を使った新しいビジネスをする個人事業主が増えてきて、国税庁もその人達がどれだけ稼いでいるかを正確に把握することが大変になってきたから、積極的に税務調査をしている、と伝えられています。

個人事業主で脱税する絶対数が明らかに増えたというよりかは、こういったビジネスが「怪しい」と目を付けられるようになったと思っていただいていいかと。

いずれしろ、意図的かどうかは別にして、本来税法上は申告をしなければいけないにも関わらず、申告していない=無申告の方もまだまだ多くいるのではないか、という目線で当局(税務署)はみています。

あとは、コロナ禍が落ち着いてきて、税務調査が段々と再開できるようになってきた、ということも上記の記事の背景にあるかと思われます。


そこに拍車をかけるようにはじまるのがインボイス制度です。

インボイス制度自体、無申告防止を目的とした制度ではありませんが、結果的に無申告の人をあぶり出すような側面もあります。

それがどういうことなのか、ということと、とるべき対策について解説していきます。

目次

注意すべき人

個人事業主とは?

まず、今回のターゲットである個人事業主という言葉を正確に把握しておきましょう。

事業をするときには大きく分けて、個人のまま仕事を受けて商品サービスを提供する場合と、法人を別で設立して法人として仕事をする場合があります。

事業を行うにあたって契約の当事者になるのが、個人か法人かどちらかということです。

上の記事で税務調査が厳しくなっていると言われている個人は、文字通り前者の個人のまま仕事をする事業者です。

なので、いわゆる会社勤めのまま事業をする「副業」も個人事業主に含まれます。

インボイス制度の影響のある業態は?

個人事業主のビジネスもいろいろな種類がありますが、注意しなければいけないのはお客様が事業者(一般消費者でははない)のビジネスを行っている方々です。

いわゆるBtoBビジネスだと思っていただければ。

インボイス制度がBtoBをする個人事業主の税務調査と関係があるのは、インボイス登録を迫られる可能性が高く、登録すると税務署に情報を捕捉される可能性も高くなるからです。

それならインボイスを登録しないほうが良いのでは、という考えが一瞬浮かぶかもしれませんが、そうは簡単にはいきません。

なぜなら、インボイス登録をしないと、お客様である事業者に損をさせてしまう可能性があるからです。

もう少し具体的にいうと、お客様の消費税の納税額を増やしてしまう可能性があるということです。


それがどういうことか解説していきます。

お客様である事業者の消費税の納税額は、このように計算されることになっています。

消費税の納税額=預かった消費税ー支払った消費税

つまり、個人事業主に対価を払うときに一緒に消費税を払うことになりますが、そのお客様は払った消費税分、納税額を少なくすることができます。

いっぽうで、インボイス制度下では、個人事業主側がインボイス登録していないと、たとえ消費税相当分を払っていたいとしても少なくすることができなくなります。

その分、お客様は余分な負担が増えることになる、というのがインボイス制度のやっかいなところです。


少し話が逸れて制度解説になってしまいましたが、これが個人事業主がお客様である事業者からインボイス登録を求められる理由です。

お客様としては、個人事業主がインボイス登録をしてくれないと損をすることになるから登録して欲しいという意図があります。


ちなみに、個人事業主でも一般消費者向けのBtoCを行っているのであれば、一般消費者は消費税を納税する義務はないので、インボイス制度はそれほど関係ありません。

ただ、全く関係ないともいえませんし、そもそも申告が必要なのに無申告である場合は、法令違反をしていますので、期限後申告等の対応が必要になります。

インボイス登録はリスクなのか

先ほど、BtoBをする個人事業主は「インボイス登録を迫られる可能性が高く、登録すると税務署に情報を捕捉される可能性も高くなる」とお伝えしましたが、後半の「税務署に情報を捕捉される可能性」について解説していきます。


無申告の方が登録する・しない、それぞれの選択をした場合に想定される状況は次のようになります。

インボイス登録する場合

まず、インボイス登録をするにあたっては、税務署に登録申請をしなければいけません。

その際、どんな人間がどんな事業を行っているかを伝えることになります。

住所や名前、事業内容等を記載するので、税務調査をするにはじゅうぶんな情報です。


それに加えて、取引先であるお客様からも情報が洩れる可能性があります。

というのも、インボイス登録すれば、ルールに沿ったインボイスを発行することになるのですが、お客様が税務調査を受けたときにそのお客様がもっているインボイスの情報から、無申告者が発行したインボイスだとバレる可能性があるからです。

なお、まだインボイス制度がはじまっていないので、これらの情報が行き渡ることで税務調査に発展する確率がどれくらい高くなるかは不透明ですが、理論上はあり得るのでじゅうぶんに注意すべきだと考えています。

インボイス登録しない場合

インボイス登録しない場合は、これまでと比較して税務調査の可能性が高まるわけではありません。

ただし、先ほどお伝えしたとおり、取引先であるお客様の負担がいままでより増加することになります。

なので、その増加分(お客様が支払った消費税を納税額から控除できない分)、値引き交渉をされる可能性はあります。

インボイスを登録しない場合は次の選択を迫られると思います。

  • 今までと同じ税込価額で請求する
  • 今までの税込価額からお客様が負担する増税分を差し引いて請求する

前者の場合は、お客様の立場からすると、払った消費税を納税額から控除できない分、実質値上げになりますので、その点を交渉して承諾していただくことになります。

後者の場合は、お客様が負担する増税分をこちら(個人事業主)が負担することになりますので、その分こちら(個人事業主)の儲けは減ります。


ですので、インボイス登録をしない場合は、税務調査のリスクが露呈するというよりかは、取引先との交渉や関係性への対応が必要になるということになります。

取るべき選択肢

ここまでお話したとおり、理論上、無申告の方がインボイス登録をすると、税務調査を受ける可能性が高まるのは否定できません。

なので、どうせ無申告が後々バレるのであれば、税務調査を受ける前に自主申告しておくという手もあります(そもそも、無申告はダメなんですけどね。)

仮に、税務調査を受ける前に自主申告した場合は、無申告加算税と言われる一種の罰金が軽減される措置もあります

ポイントは税務調査を受ける前です。

取引先であるお客様の要求に応じてインボイス登録をせざるを得なくて、今まで逃げてきた税務調査が来てしまった後ではこの軽減措置を受けることはできません。

また、納付していない期間が長ければ長いほど金額が大きくなる延滞税も、早めに自主申告して納付すれば最小限に抑えることができます。


ここで一点。

もし、インボイス登録をしなくても、今後も無申告が許されるわけではありません。

インボイス対応と無申告の是正は全く違う話です。

もっというと、インボイスは消費税の話ですが、一般的に無申告が問題になっているのは所得税の話になります。

インボイス対応を丁寧にしても無視しても、無申告の問題が根本的に解決するわけではないことにご留意ください

まとめ

結論、インボイス登録によって、無申告がバレる可能性が高くなることはありえますが、インボイス関係なく無申告を是正しましょう。

特に、BtoBビジネスをする個人事業主は取引先との関係性も考えて対応しなければいけないので要注意です。

もし、この記事を読んでご自身の状況に不安な点がある場合は、下の公式LINEからご相談していただければと思います。

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