事業承継では、株式を引き継ぐことが大きなテーマとして注目されがちですが、そういった財産だけではなく目に見えない経営判断基準を引き継ぐことも重要なポイントです。
今回は、引き継ぐべき経営判断基準にどのようなものがあるか、そしてどのようにして引き継いでいくべきか、ということをお話ししていきます。
目に見えない経営判断基準の承継
経営判断基準とは、経営者がその地位にもとづいて経営判断をする際の基準をいいます。事業承継においては、当然のごとくこの経営判断基準も承継していく必要があります。
なぜなら、経営判断基準が引き継がれないと、後継者が経営の主導権を握ることが難しくなるからです。
これでは、いつまで経っても事業承継は達成できず、後継者からは思うように経営ができないという不満が出たり、社内からは指揮系統の曖昧さに不安の声が出たりすることになるでしょう。
ただ、現実的にはこの経営判断基準の引き継ぎが思うように進んでいない会社は結構あります。反対に、株価対策や相続税対策といったお金が絡む分かりやすい事業承継対策はどの会社も早くから手を打っている傾向がみられます。
この原因として、そもそも経営判断基準にどういうものがあるか、ということが不明瞭で把握できていないということが考えられます。そこで、ここからは経営判断基準とは何なのか、というとを具体的にお話ししていきます。全部で4つあります。
経営理念
経営理念は、経営判断の最も土台になるものです。これ以降に説明している経営判断基準も経営理念にもとづいて策定されます。
ですので、経営判断基準の引き継ぎは、経営理念を引き継ぎからはじまるといっても過言ではありません。
この点で、事業承継における経営理念(特にミッションとビジョン)の策定については、こちらの別記事で解説していますのでご参照ください。
既に経営理念が存在している会社であっても、経営者が変われば価値観も変わるので、事業承継のタイミングで後継者が納得できる理念なのかを、確かめてみることをおすすめします。
たとえば、ビジョン(会社のありたい姿、目標)について、後継者は今まで会社が手を付けてこなかった海外展開を見据えているかもしれません。
そういった場合に、その意図が反映されていない経営理念では、後継者のビジョンを達成できるような経営判断はできないことになります。
ですので、まずは経営判断基準の土台として経営理念を見直し、言語化することが重要といえるでしょう。
経営資源に関する判断基準
経営資源とは、いわゆるヒト・モノ・カネであり、これらに関する経営判断基準を引き継ぐ必要があります。
ヒトでいえば、人材採用や人材評価に関わる判断基準です。どんな人間を採用し、どのように自社内で育てていくか、という基準は会社組織が人で成り立っているから限り、はっきりとさせておかなければいけません。
また、これを検討するにあたっては、古参社員の待遇を合わせて検討することになるでしょう。
次に、モノでいえば、設備投資に関わる判断基準が必要になります。
たとえば、設備投資の投資回収はどのようにチェックするのか、とか、●●円以上の設備投資の判断は社長だけではなく部門長といった幹部社員の承認をもらう、といったような基準です。
最後に、カネでいえば、資金対策に関わる判断基準が必要になります。
メインバンクはどこにするとか、メインバンクの借入割合は何%までにするとか、融資の条件はどこを重要視するか、といったことです。
また、売掛金の回収に遅延が生じたり、滞納が発生したときに、どういう対処をするのか、ということも明確にしておかなければいけません。
取引に関する判断基準
取引に関する判断基準とは、顧客との価格交渉や受注可否に関する判断基準です。また、クレーム発生時の判断基準もこれに当てはまるでしょう。
特に顧客との関わり方については、長年培ってきた経験値から導き出された判断基準があるはずです。そして、それは現経営者が独自に無意識的にもっているものです。
このような属人的な判断基準については、なるべく言語化し共有することで、現経営者の経験値を次世代に引き継ぐことができるようになります。
社内管理に関する判断基準
社内管理とは、主にコンプライアンスに関わる事です。
たとえば、パワハラやセクハラがあったときの対処方法や、違反者への処分方針がそうです。
事業承継のタイミングでは、組織体制が変わるため、それをきっかけに思いがけないコンプライアンス違反が見つかることもあります。
特に、従来まで経営がブラックボックス化していて、社員の業務が属人的になっている場合には、そういったリスクが潜んでいる可能性があるため注意が必要です。
リスト化して見える化する
このように、経営判断基準にも様々な種類があることがお分かりいただけたかと思います。
この点で問題になるのは、現経営者が持っている経営判断基準がどれくらいあるのかが把握しづらい、とういことです。
そうはいっても、もし事業承継のタイミングで把握できなかったら、後継者は色々な場面で迷うことになりますし、現経営者としても何を伝えればいいのか分からないままになります。
ですので、それらをぜひリスト化してみることをおすすめします。リスト化といっても、そんなに細かく書く必要はありません。細かさよりも、網羅的に現経営者が持っている経営判断基準を書き出してみると良いでしょう。
- 経営理念
ミッション(企業使命や目的)、ビジョン(企業目標)、バリュー(行動指針) - 経営資源に関する判断基準
ヒト(組織育成)・モノ(設備投資)・カネ(資金繰り)に関する判断基準 - 取引に関する判断基準
顧客との関わり方、価格交渉での判断基準 - 社内管理に関する判断基準
コンプライアンスに関わる判断基準
これらを書き出して、できれば一枚の表にしていただくと、分かりやすい資料が出来上がります。
まとめ
今回は、事業承継で引き継ぐべき経営判断基準とは何か、ということと、それを引き継いでいくためのポイントをお伝えしました。
引き継ぐべき経営判断基準
・経営理念
・経営資源に関する判断基準
・取引に関する判断基準
・社内管理に関する判断基準
これを一枚の表にまとめる。
◆編集後記
昨日は買い物がてら夜に散歩。
この時期の夜は快適です。
◆家トレ日記
BOOST ATHLETES
(DAY1)確実に胸を大きくする2分30秒の強烈に効かす大胸筋トレーニング
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◆ 1day1new
静的フロントページ導入