こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。
経営をしている方であれば、資源(リソース)をどのように配分するかを常に考えていると思います。
ここでいう資源(リソース)とは、ヒト・モノ・カネです。
とりわけ、カネの配分方法は一歩間違えると命取りになります。
最悪、ヒトとモノで失敗しても会社は潰れることはありません。経営者さえ生き残っていれば運営はできます。
では、どのタイミングで会社は潰れるのかというと、カネがゼロになったときです。これは日本が資本主義であるかぎり避けられません。
ですので、カネの配分方法は非常に大切になってくるのですが、その配分方法を明確にすることが、戦略と資金繰りを結びつけることにつながります。
カネの配分を考えることは、お金をどこに、いくら配分したら会社が理想像に近づくのかを考えることです。
ここを曖昧にしたまま、何となく必要そうだからお金を投下している、という方は要注意です。
お金が湯水のように湧いて出てくるならそれでもいいかもしれませんが、そうではないなら闇雲にお金をばら撒いているのと同じになってしまいます。
ということで、この記事では、簿記や会計が苦手な方向けに、実践的なお金の配分方法を図を使いながら分かりやすくお伝えしていきます。

まずは現状確認
お金の配分方法を考えていくためには、現時点でどういう配分状態になっているかという現状確認が必要になります。
そのためにまず、やるべきことは、お金に色をつける、ことです。
お金に色をつけるとは、お金を目的別に分けることをいいます。
ちなみに、これの逆の状態がドンブリ勘定です。
ドンブリの器に全てのお金が混ぜこぜになってしまって、そこから必要な経費を払っている状態をいいます。
その状態だと、何にいくら使ったのか分からないですよね。
ですので、少なくともこの記事を読んでいただいる方には、ご自身の会社の事業用の口座がドンブリ状態になっていないか確認していただきたいのです。
もし、ドンブリ状態になっている場合は、ここからお話しするツールを使ってドンブリから脱却していただければと思います。
で、そのツールが「お金のブロックパズル(通称:ブロックパズル)」です。
このブロックパズルは、西順一郎氏が著書「戦略会計STRACⅡ」で紹介するSTRAC表(現・MQ会計表)をベースに、和仁達也氏が考案したもので、このブログでも何度か登場しています。

このうち、お金が入ってくる入口と残っている部分は青色のブロックで、逆に、お金が出ていく出口はピンク色のブロックになります。
書き方としては、左の売上から自社の数字を埋めていっていただければと。
一応、各ブロックを簡単に説明しておくと、
- 売上は文字通り収入
- 変動費は商品や在庫の仕入れ、外注費(売れる商品の数に比例して増えるもの)
- 粗利は売上ー変動費
- 人件費は役員、社員の給料、賞与、法定福利費などの経費
- その他固定費は、水道光熱費、家賃、広告宣伝費、税理士報酬といった上記以外の経費
- 利益は粗利ー固定費(人件費+その他固定費)
- 税金は法人税+事業税+住民税(利益の約3割)
- 税引後利器は利益ー税金
- 減価償却費は通常その他固定費に含まれているもので、支出を伴わない費用(足し戻し)
- 返済は金融機関から借り入れがある場合の返済額
- 設備投資は機械、車、建物などの購入額
- 繰越金が最後に残るお金
になります。
通常は損益計算書、固定資産台帳、借入返済予定表などをみれば大まかには書けるかと思いますが、難しい場合は、顧問税理士さんに聞いてみてください。
この現状のブロックパズルを書くことができれば、会社にお金がどれくらい入ってきて、どういう使い方をしていているかが見えてくるはずです。
つぎに理想像を見える化
前項の下準備ができたら、理想のブロックパズルを逆算で書きながらお金の配分方法を考えていきます。
ポイントは逆算です。
つまり、先ほどは左の売上から説明していきましたが、配分方法を考えるときは右下の繰越金からスタートします。
具体的な手順は以下のようなになります。
- 将来の設備投資や万が一のための余剰資金として毎年いくら繰越金を残しておきたいかを決める
- 買い替え時期や新規取引の予想から、設備投資がどれくらい必要になるかを決める
- 借り入れている返済予定表から、返済がどれくらい必要かを確認する
上の3つを足すと、税引後利益と減価償却費の合計額がどれくらい必要になるか分かります。
減価償却費は、正確な予測数字が固定資産台帳などから分かるなら反映していただいてもいいのですが、わからなかったら直近の決算時の減価償却費を仮置きしましょう。
そして、税引後利益に中小企業の実効税率である約3割を割り戻すと、利益目標が見えてきます。
このあとにやることは次のとおり。
- その他固定費を、もっとお金をかけたいものと逆に削減したいものに整理して、どれくらい必要になるかを決める
- 既存の人件費に、新しく採用する人や退職する人を考慮して、人件費がどれくらい必要になるかを決める
そうすると、利益目標と固定費が見えてくるので、自然と粗利目標が分かりますよね。
最後に、粗利から粗利率を割り戻して、売上目標を算定します。
粗利率とは、売上のうち粗利の占める割合で、上の現状の図でいうと、80(粗利)/100(売上)=80%になります。
今説明した売上目標の立て方の流れをイメージにすると、このようになります。

逆算なので、売上目標は最後の最後まで分からない、というのが特徴です。
言い換えれば、売上至上主義ではなく、何にお金を使って理想の姿になりたいか、を重要視する組み立て方ということになります。
一般的には、業績目標として売上が一番分かりやすいので、売上目標から考えてしまいがちです。
ですが、売上目標から考えると、まず天井を決めてしまうことになるので、そのあと考えるお金の配分方法に限界が出てきてしまいます。
そうすると、これはできる・あれはできない、という議論になってしまって話が前に進まないんですね。
もちろん、最終的には実効性のあるお金の配分方法を考えないといけないのですが、順番が大事で、まずは「何にお金を使いたいか」を考えて、次に、「どれを優先するか」という優先順位づけをするのがポイントです。
この過程を経ることで、お金をどこに、どれくらい配分したら理想像に近づくのか、ということが分かってきます。
資金繰り表でリソースを管理
ここまでで、現状のお金の配分と、その次に理想の配分をビジュアル化する方法をお伝えしてきましたが、ひとつ抜けていることあります。
それは、理想の配分をするためにお金は足りるのか、という問題です。
根本的な問題といえばそのとおりで、だからこそ、お金の配分方法を考えたら、それを実行するだけのリソース(資金)が途切れないように管理していかなければいけません。
それを解決するのが資金繰り表です。
サンプルとしてはこのような表なのですが、おそらく一度は目にしたことがあるのではないかと思います。

このサンプルでは月別に現金の出入りを集計していますが、状況によっては週別や日別で作るのもアリです。
ただ、その分手間はかかります。
簡単に縦軸の構成を説明しておくと、経常収支は日々の営業活動で出入りする入手金記録を用途別に並べています。
収入は事業別や、商品別、店舗別で分けてもOKです。
支出は金額の大きいものや、定期的に発生しているものは項目別に記載して、それ以外はその他経費にまとめて記入しても構いません。
設備収支は自社の商品や製品ではない設備投資を売ったり、買ったりしたときのお金の出入りです。
たとえば、製造業を営んでいる企が、古くなった工作機械を売れば収入に記入して、新しい工作機械を購入すれば支出に記入することになります。
最後の財務収支は金融機関からの資金調達に関するお金の出入りです。
新たな融資が下りて入金されたら調達に記入し、その後返済していけば返済金額を返済の欄に記入することになります。
資金繰り表のより細かい運用方法についてはこちらの記事を参考にしていただければと思います。

そして、基本的に、この資金繰り表で”今”のお金の管理をすることはできますが、本質的に重要なのは、”将来”お金が足りるかということです。
あくまでも知りたいのは、これからのお金を配分方法が資金的に実現可能なのか、どうかだからです。
なので、月別に予測も書いていってください。

この予測の欄を書く時は、実績の数字をもとに、先ほどの「何にお金を使いたいか」と、「どれを優先するか」を考えて、プラスマイナスしながら記入していくことになります。
実績は前月を参考にしてもいいですし、季節性があるなら前年同月を参考にしてもいいかと思います。
この予測を立てていくことで、今後のお金の配分方法について、「資金的にハードルが高そう」とか、「この時期は売上の入金がたくさんあるから集中して投資できそう」といったことを考えることができるわけです。
そしてこの予測は、最低1年先までは作っておいていただければと。
1年先が見えていれば、もし何かがあっても業績の立て直しや、融資での調達を余裕をもって考えることができるので。
以上、お話しした全体の流れを踏まえれば、何にお金を使えば会社が理想の姿になるのかが分かり、かつ、そのためのお金を工面することができる、ということです。
今回ご紹介したブロックパズルや資金繰り表の使い方が分からなかったり、自社に置き換えるとどうなるか確かめてみたいという方は、下の公式LINEから質問いただければと思います。
