【note】フリーランスのお金と暮らしの話

後継者が知っておきたい理念策定3STEP

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こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

ありがたいことに、同世代の若手経営者の方とお話する機会があります。

その同世代の若手経営者というと、私の年齢が30代前半ということもあり、事業承継前後の方が多いです。

そして、事業承継をきっかけに、と見直しの対象になるのが経営理念。

とはいえ、特段見直さなくても問題を感じていないなら、経営理念を見直す必要はありません。

ただ、事業承継のタイミングで組織的な問題を抱えている場合は、経営理念を見直すべきです。

組織的な問題とは次のようなものです。

・ルーティンワーク以外の非定型な仕事を敬遠する
・新規獲得の営業をや販促活動を嫌がる
・社員同士の報連相がない、指示を実行しない
・お客様や他のメンバー、経営陣に対する愚痴・不満が多い
・知識やスキル不足以外の顧客対応面でクレームが出る

会社の売上や利益や採算などは気にしない
・古参社員とのコミュニケーションがうまくいかない


これらの問題は、経営理念を本気で見直し、実践することで解決できる可能性が高まります。

そこで、本記事では事業承継時の具体的な経営理念の策定方法をお伝えしていきます。

目次

STEP0:なぜ見直しが必要なのかを理解する

タイトルで3STEP、と言っていますが、具体的な策定方法の説明に入る前に、見直すべき理由が明確になっていないと、この記事を納得して読み進めることはできないはずなので、まずSTEP0でその理由を説明します。

で、さっそく理由からお伝えしてしまうと、地球上の誰一人として同じ判断軸を持っていないからです。ここでいう判断軸とは、経営理念という言葉を理解しやすいように崩した表現だと思っていただればと。つまり経営理念=判断軸です。

判断軸は、人間が日々直面するさまざまな選択に対して、YesかNoを決める基準です。感覚的に、お分かりかと思いますが、この判断軸はたとえ親子であっても全く同じ、ということはありません。

育ってきた家庭環境や、人間関係や、経済環境が違えば、全ての事象に対して全く同じ判断軸を持っていることはないはずです。

この点で、経営者は自らの判断軸に沿って行動し、成果を追い求めることになりますが、その判断軸が借り物だったらどうでしょうか。納得できないまま経営することになりますし、そうすると、いつまで経っても経営の主導権を握ることができません。

もっというと、事業承継は、場合によっては予期せぬ事態で承継を迎えることも少なくありません。その場合は、借り物の判断軸さえ理解できていない(若しくは借り物自体がない)まま社長にならざるを得ないケースもあるでしょう。

と、このように判断軸は経営者自身の方位磁針的な役割を果たすのですが、対外的な効果もあります。対外的な効果とは、社員をはじめとした会社を取り巻く利害関係者とのコミュニケーションツールになる、ということです。

「社長が何を考えているか分からん」、「言うことがコロコロ変わる」という台詞は一度は耳にしたことや、口にしたことがあるかと。これは判断軸が関係者に伝わっていないか、そもそも本当に経営者の判断軸が曖昧なのか、どっちかなんですね。

それを防ぐためにも、判断軸を整えて明文化する必要がある、ということになります。ひいては、これが事業承継において経営理念を見直すべき理由になるわけです。

というのが定性的な話ではありますが、定量的にも、事業承継時に経営理念を見直したほうが会社は発展する、ということは統計データから明らかになっています。

この東京商工会議所の事業承継の実態に関するアンケート調査結果報告書のアンケートデータは、過去の記事でも紹介していますが、「事業承継後に業況が良くなった」と答えた企業は、積極的に経営理念の整備を行っていることがわかります。
(※報告書(全文)の43ページ目をご参照ください。)

多少長くなりましたが、事業承継時において、経営の判断軸、つまり経営理念を見直したほうが良いということが分かっていただけたかと思います。

ということで、次からは具体的な経営理念の策定方法を解説していきます。判断軸は、過去に関わる判断軸、未来に関わる判断軸、現在に関わる判断軸の3種類ありますので、それぞれ順番にみていきましょう。

加えて、今回は事業承継という場面を想定しているので、事業承継時ならではのポイントも合わせてお伝えできればと。

STEP1:使命・目的を言語化する


使命・目的を口語的な表現にすると、「なぜその事業をする必要があるのか」、ということになります。極端な言い方をすれば、「別にその事業がなくても世界は回るのに、なぜわざわざ事業をするのか」、という事業を行う大義名分を言葉にしたもの、ともいえます。

ですので、基本的にこれを言語化するときには、「なぜ事業を始めたのか」、という過去の感情や状態を紐解くことになります。さきほどの3種類の判断軸でいうと、過去に関わる判断軸になるということですね。

で、過去の感情や状態は、その過去において事業をはじめた当事者本人にしか分からないので、その当事者本人である経営者(創業者)が中心となって言語化していきます。

もちろん、過去にあった事実を振り返るわけなので、良い思い出ばかりではなく、苦労した思い出が想い起されることもあります。ですが、むしろ苦労した思い出こそ、事業を始めた真の目的になっている可能性が高いので、躊躇することなく言葉にしていきましょう

と、ここまで読んでいただいたら分かると思いますが、事業承継の場合、後継者は創業者ではないので、「なぜ事業を始めたのか」、を言葉にすることはできません。

なので、事業承継のタイミングで経営理念を見直す場合であっても、先ほどお伝えしたとおり、使命・目的の言語化は創業者が中心になります。

いっぽうで、状況によっては創業者がいらっしゃらない場合もあるでしょう。そういうときは、なるべく創業者に近しい人や、創業に携わっていた人などから、そのときの状況をヒアリングして整理していきます。

そして、後継者は出来上がった文章をみて、自分自身の使命・目的として納得できるかを検討します。納得できない部分がある場合は、言葉の真意を創業者に聞いたり、話し合いながら言葉を入れ替えたりしていきます。

ただ、多少言葉のニュアンスが気になっても創業者の表現を優先することをおすすめします。なぜなら、使命・目的は、創業者の想いが強く反映されるべきものであり、その想いとかけ離れた文章になってしまうと創業者が納得することができないからです。

STEP2:目標を言語化する

次に言語化する目標とは、ありたい姿です。会社の将来の理想像ですので、未来に関わる判断軸ともいえます。達成すべき目標なので、イメージしやすいように、店舗数など数字で表されることが多いのが特徴です。

よく、STEP1の使命・目的と何が違うのかを聞かれますが、使命・目的は経営者や会社が一生をかけて追求するもので、目標はその追求の過程にあるものです。なので、前者は基本変わらないのですが、後者は達成したら変わります。

じゃあ、目標は誰を中心にして言語化していくのかというと、後継者です。なぜなら、目標は未来に実現させたい事象であり、その未来において経営を担っているのは後継者だからです。

そして、目標の言語化にあたっては、後継者が得たい未来のさきにある、その未来が実現したときに、社員やお客様にどうなっていて欲しいか、を言語化することがポイントです。

具体的にいうと、たとえば後継者が売上100億円を目標にしたい、と考えたときに、それ自体を目標に掲げるのではなく、その目標が達成したときに、社員はどういう感情や状態で働いているか、お客様はどのように喜んでくれているか、を言語化するということです。

なぜこれがポイントになるかというと、関係者に共感され、応援される目標を言語化するためです。売上100億円、だけを掲げていても、関係者からは「どうぞ頑張ってください」にしか思われないので、いかに共感を生むかが重要です。

と、こうして考えると、事業承継におけるの理念策定では、STEP1で創業者を中心に使命・目的を言語化し、STEP2では後継者を中心に目標を言語化することになります。

ここで心配になるのは、使命・目的と、目標の辻褄が合っているかどうかです。やはり、最終的には同じ経営理念を構成する要素になるので、お互いが連携し合ってなければいけません。

ですので、目標を言語化するときには、使命・目的との整合性をチェックしながら進めていくとよいでしょう。必要な場合は、言葉のニュアンスを変えることもあります。

STEP3:価値観・行動指針を言語化する

最後のSTEPは価値観・行動指針の言語化です。価値観・行動指針は、使命・目的や、目標を達成するために、日々の行動で心がけることです。つまり、「いま、この瞬間に何を大切に判断すべきか」という、現在に関わる判断軸になります。

いまお伝えしたとおり、この価値観・行動指針は、日々の行動で心がけることなのですが、事業を行うために日々行動しているのは、経営者だけではなく、社員全員です。むしろ、日常的にお客様と実際に接する機会が多いのは、どちらかというと社員であるはずです。

したがって、価値観・行動指針は、基本的に社員全員で言語化することになります。社員全員なので、雇用形態に関係なく、正社員はもちろん、パートやアルバイトの社員も巻き込むことがポイントです。

そこで、社員全員から日々の業務で大切にしていること、大切にしたいことを集めてください。そして、どのアイデアが重要なのかを全員で話し合っていただければと。その過程で、きっと経営者が見えていない現場のあれこれが見えてくるはずです。

「社員全員を巻き込んだらなかなか意見がまとまらないんじゃないか」、というのはそのとおりです。ですが、それでよくて、意見をぶつけ合うなかで、社員同士が、お互いが大切にしていることを共有し合う過程が重要です。

なお、価値観・言語化の言語化に関していえば、事業承継のタイミングでの注意点というものはありませんが、敢えていうとすると、古参社員の意見もしっかり聞くことです。

古参社員は経験値や生き抜いてきた環境が違うので、当然のように後継者や他の社員と異なる価値観をもっているはずです。ですが、それをないがしろにすることなく、古参社員の意見も価値観・行動指針に反映させましょう。

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