【note】フリーランスのお金と暮らしの話

理念に業界色は必要か?

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こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

先日、クライアントと話していて、理念をつくるときに、業界ならではの言葉は必要なのか、という話になりました。

つまり、その理念をはじめてみる人が、その会社の業種を連想できるような言葉を入れたほうがいいのか、というのが論点です。

こういった話は、理念をつくる過程で文章が抽象的になったときに、よく起こります。

確かに、一目で業種を連想できたほうが、オリジナリティがありますし、印象に残るかもしれません。

特に、つくった理念を社内だけではなくて、社外用の広告物に載せることを考えているときは、そういった点を気することもあるでしょう。


ただ、結論からいうと、私はそういった業界を連想させる言葉はマストではない、と考えています。

というのも、ここに固執しすぎると、理念の本来の役割を犠牲にしてしまう可能性があるからです。

オリジナリティも大切ですが、理念をつくる目的を見失わないようにしなければいけません。

目次

理念は誰のためのものか?

理念は、経営の最上位概念です。
経営計画も、戦略も、予算も、人事評価も全て理念が起点になります。

ですので、経営者が一番頼れる判断軸ともいえるものなので、まずは経営者が納得できるものでなければいけません。

自分自身に嘘をついた、建前上の理念なら立てない方がまだマシです。
嘘の理念を立てたがために、実現しなくて苦しむのは経営者自身になります。

ひとつ例をあげまます。

ある企業が、今後は既存の業界に留まらずに、異業種への参入をしていきたいという意向があるとします。
それにも関わらず、既存事業の業界色を前面に出した理念だと、本音と建前が出来上がってしまいますよね。

そうなってしまうと、社員から疑問の声が聞こえてくるかもしれません。
なぜなら、経営者が言っていることと、やっていること(やろうとしていること)に乖離があるからです。


もっというと、今後も既存の業界だけに絞って事業していくなら、理念に業界色を出してもいいとは思いますが、それでもマストではない、というのが私の見解です。

要するに、大前提として、理念は経営者の本心の塊だということは、理解しておく必要があります。

この大前提が守られているからこそ、その言葉が経営の最上位概念になり得ます。
キャッチ―な言葉だけ並べていても、それが本心じゃなければすぐに消費者から見抜かれてしまいますので。

対消費者のだけでなく、採用でも同じです。

理念をつくって求人広告に載せ、それに魅了されて入社してくれたとしても、会社が実際にやっていることが理念と違ったら失望しますよね。

その結果、すぐに辞められてしまっては元も子もありません。
採用広告費や在籍期間中の給与という出費も大きいので、財務的にも大きなダメージです。

でも、業界を考えることは大切

いっぽうで、自社を取り巻く業界をまったく考えずに、理念を策定することは危険です。

というのも、その理念を見たり聞いたりした人が、他人事ではなく、自分事になってもらえなければ理念は実現しないからです。

周りの人に共感され、応援されてはじめて理念は実現します。

自分事とは、その理念が自分にとって関係があると思ってもらえることなのですが、そう思ってもらうためには、受け取る人に恩恵があることを考えなればいけません。

この点で、いまどんな事業をしていて、将来どんな事業をするのであれ、何らかの業界に属しているはずです。

そう考えると、自社の関わっている業界に対して、どういう良い恩恵をもたらすか、ということを理念で明示できていることが、自分事になってもらうためのポイントになります。

そのポイントをもう少し具体的に説明します。
理念を構成する3要素の1つに、ミッションがありますが、ミッションの型というものがあります。

  • どのような自分の想いや
  • どのようなスキル・行動をもってして、
  • 相手をどんな状態にするか

ミッションはこの3つの視点から考えます。

そして、3つ目の項目にある相手は、自社に関わるステークホルダ―(利害関係者)をイメージします。
このステークホルダーのなかには、社員はもちろん、取引先や得意先に加えて、自社と関わりのある業界も含みます。

つまり、業界に属する同業者や協業先が自分事化する恩恵を言語化する、という意識が重要になってきます。


この意識はミッションだけではなく、ビジョンの言語化においても必要です。

ビジョンを考えるときは、まず、自社が数年後にどういう状態になっていたいか、という自社の理想像を考えます。

次に、自社の理想像が実現したときに、自社に関わるステークホルダーがどうなっているか、というステークホルダーの状態も考えます。

この考え方は先ほどのミッションと同じですね。

で、この状態は目に見える状態だけではなく、目に見えない状態も考えてください。

目に見える状態とは、その業界で働く人が増える、といったことで、目に見えない状態というのは、その業界で働く人がワクワクと働けている、といった感情的なことです。

もし、ステークホルダーの具体的なイメージが湧かなければ、自社を中心にどういう人が関わっているか、ということを紙に書いてみることをおすすめします。

書く時は、できるだけ細かく、個別名称で書くと具体性が高まります。

「得意先」でまとめるのではなくて、「A社」「B社」「C社」といったように。


前項を含めてここまでをまとめると、無理やり業界色を入れることで、経営者の本心の塊という理念の大前提が崩れるなら入れる必要はないけれども、自社が業界に与える影響は意識すべき、ということです。

必ずしも、理念の最終的な表現には出てこなくても、検討する過程では意識することが大切なんですね。


ちなみに、いまご紹介したミッションの型やビジョンの組み立て方はこちらの本の著者から直伝を受けています。

理念の裏側を説明できるように

冒頭にもお伝えしたとおり、理念に業界色がないと、どうしても抽象的な表現になることが多いです。

たとえば、飲食店を展開している会社の理念が、「お客様を満腹にします」なら、飲食業界の会社なんだな、ということが分かりやすいですが、「お客様を幸せにします」だと、どんな業種でも当てはまります。

でももし、この会社がいまは飲食店を展開しているけれども、介護業界にも進出することを考えていたら「満腹」という言葉は相応しくないですよね。

何が言いたいのかというと、理念が抽象的な表現であれば、なぜ抽象的なのか、ということを他人に説明できるようにしておくべき、ということです。

というのも、理念は経営者だけではなく、社員や社外の第三者の目に触れるものだからです。

そのなかでも、最初に伝えるのは社員になるかと思います。

社員から、なぜ抽象的な表現にしているのか、という質問が出たときに、その理由を答えられなかったら社員は心配になりますよね。

これでは、理念といっているのに、その理念で社員に対して方向性を示してあげられていない、ということになってしまいます。

こうならないように、その言葉を選んだ理由を自問自答して、第三者に向けて発表する前に身近な誰かにツッコミどころがないか確認してもらったほうがいいかと思います。

先ほどの例でいうと、なぜ業界を連想できる言葉がないのか、なぜ「お客様」という言葉を選んだのか、「社員」は幸せにならなくてもいいのか、を、腹落ちできるまで何度も咀嚼することが非常に大切になってきます。

商品サービスから連想できる

というように、自社が業界に与える影響を考えて、各ステークホルダーを理解してもらうおうとする意識は大事です。

それが、理念のミッションやビジョンに直接的に表れていなくても、です。

むしろ、業界色を前面に押し出す必要はないですが、その意識はおろそかにしてはいけません。


それでも、第三者が理念をみたときに、業界ならではの言葉がないのが心配だ、ということであれば、理念と自社の商品サービスを並べてみてください。

言わずもがなですが、自社がどういう業界や業種なのかはわかるはずです。

第三者が、会社の理念を標語のようにそのまま単体でみることはほとんどないかと思います。

必ず、商品サービス名や会社名をわかったうえで理念に触れるはずです。


逆に考えると、複数の事業をしている会社の理念に、業界を絞るような言葉が入っている場合は、特定の商品サービスと合わなくなる可能性もあります。

そうすると、それをみた第三者は混乱しますよね。

ということからも、無理やり理念に業界ならではの言葉を入れる必要はないのではないか、と考えています。

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