【note】税理士のアタマの中

【歯科開業】半年前にやるべき3つの準備と失敗パターン

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こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。

今複数の歯科開業に関わっているのですが、「これが遅れると開業も遅れる」「資金繰りが整わない」というターニングポイントがいくつか存在します。

今回は、そのなかでも特に開業半年前あたりに時間と労力を割くべきポイントをお伝えしています。

よく歯科開業の準備は「逆算」が基本と言われますが、本当に単なる格言ではないのが現状です。

工事の納期、融資審査の期間、保健所・厚生局の手続き、スタッフ採用期間、研修期間など、動かせない制約条件が多数存在していて、どれかがズレると全体が崩れるということになりかねません。

場合によっては運転資金の浪費期間が発生するという結末を迎える可能性もあります。

歯科開業を検討されている方は、新規開業・居抜き開業問わず本記事を参考にしてくださいね。

目次

開業準備の全体像:6つのフェーズ

まず、開業準備の全体像を押さえましょう。大きく分けると以下の6フェーズに整理できます。

(他にもやることはたくさんありますが、今回は簡略化して記載します)

① コンセプト設計・物件探し
② 設計・見積り(+融資先選定・保健所事前相談・採用準備を並行)
③ 医療機器搬入〜着工
④ 物件引き渡し
⑤ スタッフ研修期間・内覧会
⑥ 開業日(グランドオープン)

    ポイントは②の「設計・見積り」段階が、実は最も多くの準備を同時並行で進めなければならない「最繁忙フェーズ」だという点です。

    この時期に何をどこまで進めておくかが、開業の成否を大きく左右します。

    次の章からは②のToDoリストをもう少し細かく因数分解していきます。

    開業準備の最重要フェーズ設計・見積り

    設計・見積りの段階は、単に「建物のデザインを決める」「医療機器の予算を決める」時期ではありません。

    この時期こそ、融資・開業手続き・採用の3つを同時並行で動かすべき最重要フェーズです

    【ポイント①】融資先の選定は「設計段階前」から動く

    歯科開業の資金調達において、融資先の選定と事前相談は設計・見積りと並行して進めるのが鉄則です。遅くともこの段階までに動き始めなければ、開業日に間に合わないケースが出てきます。

    というのも、全体的な予算はもちろんのことですが、設計士さんがどれくらいの工期を想定しているか、いつ着手金・中間金・残金を払うのかが分からないと融資のスケジュールが立てられないからです。

    たとえば3ヶ月工期がかかる場合で、引き渡し後にスタッフさんの研修や集患期間が必要だとします。

    そうすると、グランドオープン4ヶ月前くらいには金融機関の本店決裁が無事降りるかどうかが、ある程度はっきりしている必要があります。

    そして融資は申し込みから本店決済までは1ヶ月半以上かかりますので、半年前〜7ヶ月前には金融機関を決めておく必要があるということです。

    もっとも、これは遅くても、です。

    なんの面識もない金融機関に顔を出して「開業したいです!」といったところで、いきなり融資の審査がはじまるというわけではありません

    事務的な必要書類はすぐに教えられるかもしれませんが、同時並行で金融機関も身辺調査をします。

    その上で何度か面談を重ねて、「この先生になら貸しても大丈夫」と思っていただけたら、具体的な融資プランの提案をいただけます。

    担当者との相性もあるので、可能なら複数の金融機関に出向いてみることをおすすめします。

    ちなみに、歯科開業における金融機関の選び方に関してはこちらの記事で解説しているので、候補先を探している方はこの機会に確認してみてくださいね。


    どの金融機関を選ぶにしろ、融資審査では「事業計画書」の作成が求められます。

    税理士と連携してリアルな収支計画・資金繰り計画を作成することが、融資承認の近道です。

    設計・見積りの打ち合わせ段階(見積り確定前の段階)で概算の初期投資額が判明していると、融資額のシミュレーションがスムーズに進められます。

    【ポイント②】保健所への事前相談は早めが命

    歯科医院の開業には保健所への開設届の提出が必要です。

    ただし、保健所は単に書類を受け付けるだけでなく、施設の構造・設備が医療法の基準を満たしているかの確認も行います。

    設計段階で事前相談に行くことで「この間仕切りの高さでは基準を満たせない」「消毒設備の配置を変える必要がある」といった指摘を設計変更のうちに解決できます。

    着工後や完成後に判明すると、改修費用と時間の両方が発生する最悪の事態になりかねません。

    【実務Tips】保健所への事前相談で確認すべき主な事項
    診察室・待合室・消毒設備の面積・配置基準・X線室の防護構造・汚物処理設備の設置場所・院内感染対策のための構造的要件・開設届の提出タイミング

    そして何より、保健所への開設届が必要なのは、厚生局へ保険医療機関の指定申請をするためです。

    保険医療機関指定申請には開設届の副本(収受印を押した控え)が必要になり、一般的には保険医療機関指定申請の期限が毎月15日で翌1日から指定になります。

    つまり開設届が遅れると保険医療機関指定も遅れることになります。

    【ポイント③】労働条件を整え採用活動を始める

    2026年現在、歯科衛生士の有効求人倍率は依然として高水準で推移しており、「開業直前に求人を出しても間に合わない」というケースが後を絶たない状況は日本全国で起きています。

    「開業」は既存医院より採用面で有利に働くケースは多いですが、それでも求める人材が来るとは限りません。

    だからこそなるべく早く、そして広く医院の認知を獲得する必要があります。

    そのためには採用のランディングページ(LP)制作と情報発信を開始することが重要なキーポイントです。

    ただし、LPを作るといってもある程度給与テーブルの条件が固まっている必要があります。

    LPには多めの金額を書いておいて、内定が決まったのちに減額するなんてことをしたらトラブルになりかねないからです。

    これから開業を考えている先生方は、とにかく労務問題に関しては気を張っていただいて損することはありません。

    労務問題の専門家は社会保険労務士さんです。

    理想は融資の申し込みを進めている段階で、社会保険労務士さんも同時並行で探しておきましょう。

    採用期間のあとに面接期間や適正検査が必要で、吟味に吟味を重ねた後に内定通知となると、あっという間に数ヶ月は消耗します。

    採用の情報発信に関しては、ぜひ院長先生自身のアカウント作ってSNS(Instagram・Threads・Xなど)やブログ等を始めていただくことを強くおすすめします。

    なぜSNSはじめ情報発信が必要なのかという理由は、こちらのnote記事を書いたことがあるのでご参考ください。

    よくある失敗パターンとその対策

    ここまではやって欲しいことを書いてきました。

    逆説的にはなりますが、ここからは関わってきた案件の中で、開業半年前の準備を怠ったがための「やってしまいがちな失敗」をまとめていきます。

    ぜひご自身の準備状況や計画と照らし合わせながらチェックしてみてください。

    ❌ 失敗①:融資申請が遅れて開業日がずれる

    「見積もりが出たら銀行に行こう」では手遅れです。

    そもそも着金のスケジュールが組めないですし、本店決裁が降りるまでは最低でも2〜3ヶ月かかります。

    審査が通らなかった場合の代替プランを含め、設計段階から複数の融資先に並行アプローチすることが必須です。

    ❌ 失敗②:保健所の指摘で工事のやり直しが発生

    「完成後に保健所の検査に行ったら基準を満たしていなかった」というケースは珍しくありません。

    特に保健所によってローカルルールがあったり、担当者で指導する内容が違ったりする、といったことも想定しながら準備をしていく必要があります。

    ❌ 失敗③:歯科衛生士が開業日に揃わない

    歯科衛生士の採用は「出したらすぐ採れる」と思っている方は少ないかもしれませんが、現実は想像以上に需給が逼迫しています。

    採用活動は設計段階から開始し、LPやSNSで医院の魅力を継続的に発信することが欠かせません。

    採用ができないと最悪の場合、開業を延期せざるを得なかったケースもあります。

    特に歯科衛生士さん主体の医院は、収益性の悪化に直結しますのでよりシビアな採用の成果が必要です。

    ❌ 失敗④:保険医療機関の指定が間に合わない

    保険医療機関の指定申請は、保健所の開設届提出後に行います。

    上記で説明したとおり申請から指定まで複数の手順と時間がかかるため、保険診療ができないという事態を招かないように関係行政機関が必要とする手続きを確認しておきましょう。

    税理士視点で見る「開業前後の資金管理」

    最後に、税理士として特に強調したい「お金の話」をお伝えします。

    歯科開業では初期投資が大きいため、「開業後どれだけ早く収支をプラスに転じさせるか」が経営の焦点になります。そのためには、開業前の段階から精緻な資金繰り計画を作成し、月次でモニタリングする仕組みを整えることが重要です。

    • 開業後6ヶ月分の運転資金を「別枠」で確保しておく
    • 勤務時代の所得税の予定納税、住民税の普通徴収を見越した資金計画を立てる
    • 開業1〜2年後の増員・設備投資に備えた資金確保プランを持つ

    事業計画は「融資を通すためのツール」ではなく、「開業後の経営計画」として活用してください。

    まとめ

    歯科開業の成否は開業半年前の動き方で決まります。

    この時期に

    ①融資先への早期アプローチ、②保健所への事前相談、③労務対策・採用活動の開始、の3つを同時並行で進めることが不可欠です

    「見積もりが出てから動く」「開業直前に求人を出す」といった後手の対応が、開業延期や資金繰り悪化につながる典型的な失敗パターンです。

    工事・融資・手続き・採用、それぞれに「動かせない期間」があることを前提に逆算スケジュールで準備を進めましょう。

    開業の進め方に関して分からないことがあればLINEでお問い合わせください。SNSのDMでも大丈夫です。

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