こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。
MVVと呼ばれるミッション、ビジョン、バリュー。
こういった類のものは、その呼び方も定義も人それぞれで、正解はありません。
理念、パーパス、フィロソフィーなど、表現の仕方はいろいろあります。
何でもいいのですが、経営の重要な指針や判断軸として、「絶対なきゃいけないもの」という理解をもたれている方も多いかと思います。
実際、融資にあたって金融機関に提出する事業計画書に、最初にビジョンや理念を書くことは多いですよね。
では、こういったMVVは本当に「絶対なきゃいけないもの」なのかどうか。
私は、安易に策定するMVVは作らないほうが良い、と考えています。
先ほどもお伝えしたように、融資が目的で言語化することはありますが、はたまた、社内向けに社員の判断軸や会社の方向性として策定することもあります。
この点で、融資が目的なのであれば、その事業計画書をみるのは金融機関や作った本人である経営者と顧問税理士くらいでしょう。
そして、金融機関や顧問税理士は、MVVがそのとおりに実現しなかったり実践されなかったりしたとて、実行の当事者ではないので、不利益を被るわけではありません。
なので、会社が作るMVVについて、そこまで重視していないのが事実かと思います。
実際、事業計画の数字の組み立てが甘いということで金融機関から事業計画に対する指摘が入ることはありますが、MVVや理念が原因で融資を受けられない、ということは聞いたことがありません。
いっぽうで、社内向けの判断軸や会社の方向性として策定するのであれば別です。
この場合、MVVは組織全体の共通言語になる、といえます。
そうなると、経営者だけではなく社員もMVVの実行の当事者になります。
つまり、MVVが会社という組織運営に大きな影響を与えることになるんですね。
良い影響を与えることもあれば、あまり良くない影響を与えることもあるのがMVVです。
MVVは会社の内外に対して発する声明文でもあります。
この点で、MVVでうまくトラブルを乗り越えたのはスープストックトーキョーです。
この件に関してはこちらの記事を参考にしていただければと。

本記事では、反対にどんなMVVの策定の仕方だとあまり良くないMVVが出来上がってしまうのか、ということを解説していきます。

失敗するMVV策定のポイント
ここからは、私やお付き合いがある経営者の方々から聞いた経験談をもとにしながら、MVV策定の注意点を紹介していきます。
ぜひ、自社に当てはまることがないかを確認しながら読み進めていただければと思います。
その1:経営者が本気で考えない
いきなり「そんなことある!?」と思われるかもしれませんが、実際にあります。
どういうことかというと、確かに経営者自身はMVVの価値は分かっていて、他社のMVVをみると自社でも作りたくなっているのですが、積極的に取り組もうという姿勢ではない、ということがあるのです。
そうなると、策定には部分的に関わるだけになってしまって、あとは幹部社員や社員に任せてしまうんですね。
お分かりのとおり、こういう場合は、「何となくかっこいい」とか「他社がやっているから」ということが、MVVを作る目的になってしまっている可能性があります。
先ほどお伝えしたとおり、融資用の事業計画書に記載することが目的なら特に問題ではないと思います。
なぜなら、MVVのクオリティをそこまで重視しないからです。
そうではなく、組織の判断軸や会社の方向性を社内に向けて意思表明することが目的なら経営者自身が自分の言葉で必要があります。
経営者が本気でこういう組織を目指すんだ、と腹の底から出た言葉ではないと社員には響きませんし届きません。
将来的に社員から「なぜこのMVVなんですか?」と聞かれたときに、自分の言葉でなければ、説得力をもって伝えることは難しいかと思います。
そうなれば、社員を混乱させるだけなのでMVVは作らない方が会社内は平和です。
なので、MVVを策定するなら、経営者自身の時間と労力の両方のリソースを目一杯使う覚悟を持って挑まなければいけないということです。
極論、それが難しい状況なのであればMVVを策定する時期をずらしても良いかと思います。
その2:社員を巻き込まない
今お伝えした話と逆で、経営者だけが積極的に策定に関わって、社員は蚊帳の外にいるパターンも要注意です。
MVVのうち、特に行動指針(Value)は、経営者だけでなく社員も実行主体になるので、役員・社員全員が自分事として策定に挑む必要があります。
というのも、行動指針(Value)はミッションやビジョンを実現するために、所属しているメンバーが守るべき「今やるべきこと」や「今大切にしなければいけないこと」を言語化したものだからです。
もし、Valueの策定に社員が関わっていなくて、経営者だけが考えたものだったら、それは単なる命令やルールになってしまいます。
つまり、社員の「自分達はこうしたい」「自分達はこうあるべき」という意思が反映されていないんですね。
ここで、もう一度MVVの目的をおさらいしておくと、社員の判断軸になるものです。
ということは、社員が日常の業務にあたるときの拠り所となるものでなければいけません。
経営者が直接指示しなくても、自立的な行動ができるようになるための判断基準ともいえます。
そう考えると、もし経営者だけでValueを作って掲げてしまうなら、毎日それを目にする社員はValueという言葉で「指示」を受けている状況と同じになります。
それでうまくいけばいいのですが、MVVを作るきっかけが社員に自立的な行動を促したい、ということであれば経営者だけでなく社員にも策定に参加してもらう必要があります。
その3:実現を前提としない
そもそもMVVを策定しても、事業計画においてそれを実現することを前提としていないのなら、無理してMVVをかかげる必要はないと思います。
たとえば、5年後の売上10億円を見据えたMVVであるにもかかわらず、事業計画上の5年後の売上は10億になっていない、若しくは10億円に到達するための戦略や計画がない会社さんを見かけることはあります。
で、このような状況は、MVVを策定する熱量と事業計画への熱量が一致していないときに起こります。
1つ目とも関係しますが、「何となくあったほうがいいから」というようなスタンスで策定していると、非現実的なものができるあがってしまう可能性が大いにあります。
そうすると、もちろんのことながら掲げたMVVは実現しません。
それもそのはずで、MVVを実現するための設備投資や採用などの計画が追い付いていないからです。
掲げたMVVが実現できないと一番悲しむのはそれを掲げた本人(経営者)ですし、社員からの信頼度にも影響を与えます。
要するに、掲げるからには実現を前提とした計画のPDCAをまわすことが重要だということです。
その意味で、事業計画だけではなく、MVVの策定後はそれを会社全体に行き渡らせる施策も必要になります。
「作って終わり」ではなく、経営者も社員も、MVVと向き合って体現する過程がないと行動にも表れません。
策定以降もMVVと付き合っていく気持ちがなければ、空っぽなMVVが出来上がってしまうだけになる可能性は高いです。
MVVを策定するのは比較的簡単なのですが、それを実現するための事業計画や社内施策がより重要だということです。
まとめ
今回は、MVVが会社経営にとって大きな影響をもたらしてくれるからこそ、策定するにあたっての注意点をお伝えしてきました。
もちろん、MVVは経営にプラスで働きますが、間違った理解や運用方法をしてしまうと、逆にやけどしてしまうことにもなりかねません。
会社の判断軸や方向性の明確にするために、MVVを策定する場合は以下の点に注意です。
【MVV策定でしてはいけないこと】
・経営者が本気で考えない
・社員を巻き込まない
・実現を前提としない
もし、自社・自身のMVVを策定したいけれども、本当に策定する必要はあるのか、策定するなら具体的に何から手を付けていけばいいかわからないという方がいれば、こちらのメルマガに登録していただければその答えをお伝えしています。
