こんにちは、島田です。
歯科医院を開業する際、避けて通れないのが「資金調達」の問題です。
多くの先生にとって、借入額は数千万円という規模ではなくなっていて、当然のように億を超える融資が実行されています。
院長個人で住宅ローンやマイカーローンもあるとなると、人生で最も大きな決断の一つになることは間違いありません。
「銀行なんてどこも同じでしょ?」「金利が一番低いところでいいよね」
そんな軽い気持ちで融資先を考えている方はいないと思いますが、もしいらっしゃったら少し立ち止まって本記事を読み進めてみてください。
実は、歯科業界には特有の融資ルートや、活用すべき公的な制度が存在します。
今回は開業融資を検討する際に「まず最初に調べるべき5つのポイント」と、政府系金融機関の活用術について詳しく解説していきます。
歯科医師会と連携している金融機関のチェック
まず最初に確認していただきたいのが、ご自身が入会を予定されている地域の「歯科医師会」と提携している金融機関の有無です。
(当然、入会をされないのであればこの融資制度は使えません。)
歯科医師会は、会員である先生方の経営をサポートするために、特定の銀行や信用金庫と提携ローンを組んでいることがよくあります。
これらの提携ローンの最大のメリットは、一般の創業融資よりも「金利が優遇されている」ことや、「歯科への理解が深い(傾向にある)」ことにあります。
金融機関側からすれば、歯科医師会の会員であるというだけで、一定の身元保証や業界内での信頼性が担保されていると判断します。
また、過去にその提携ローンを利用して開業した先生方の実績データが蓄積されているため、事業計画の妥当性を判断するスピードも早くなる傾向があります。
もちろん、歯科医師会への入会には入会金や会費が発生しますので、入会目的が融資だけなのであれば、そこまで強くお勧めはしまえん。
まずは、開業予定地の歯科医師会事務局に問い合わせてみたり、金融機関に提携関係の存在を確認したり、あとは既に会員である同地域の先輩に話を聞いてみることから始めましょう。
自治体の制度融資のチェック
次に意外と見落としがちなのが、都道府県や市区町村が提供している「制度融資」です。
制度融資とは、自治体、金融機関、そして信用保証協会の三者が連携して提供する融資制度のことです。
自治体が利子の一部を負担してくれる「利子補給」や、保証協会に支払う「保証料」を補助してくれる制度が付随していることが多く、実質的な借入コストを下げることができます。
例えば、表面上の金利が1.5%であっても、自治体の利子補給によって実質0.5%で借りられる、といったケースも珍しくありません。
億単位の借入において、この1%の差は数百万円単位のキャッシュフローの差となって現れます。
ただし、制度融資には「開業予定地がその自治体内であること」や「資金使途を限る」などの条件があります。
また、手続きが通常の融資よりも一段階多くなる可能性もあるため、実行までに時間がかかる場合も考慮しなければなりません。
事業計画を練る初期段階で、金融機関の窓口で確認しておくことを強くおすすめします。
歯科医師信用組合という「専門家」の存在
皆さんは「歯科医師信用組合」という金融機関をご存知でしょうか。
これは、歯科医師や歯科医療従事者のために組織された、まさに「歯科のための銀行」です。
全ての都道府県にあるわけではありませんが、神奈川県歯科医師信用組合のように、地域に根ざして強力な支援を行っている組合が存在します。
(執筆時点では神奈川県しか見つけられていませんが、他の都道府県にも存在する可能性もあることをご了承ください。)
歯科医師信用組合を利用する最大の強みは、担当者が「歯科経営の数字」を熟知していることです。
一般的な銀行の担当者は、製造業や飲食業など様々な業種を担当しているため、歯科特有の「歯科衛生士と歯科助手の違い」「レセプト収入の入金サイクル」や「自費率の推移」「ユニット1台あたりの生産性」といった話を一から説明しなければならないこともあります。
その点、歯科医師信用組合であれば、業界の常識を前提とした話ができるため、審査がスムーズに進みます。
ゆえに開業後の運転資金の相談や、将来的な分院展開、医療法人化の際にも、有力な候補先となります。
医療部門を持つ金融機関を選ぶべき理由
最近は、地方銀行や信用組合の中に「医療専門チーム」や「メディカルローン担当」を置く金融機関があります(たとえばきらぼし銀行は以下のような案内があります)
https://www.kiraboshibank.co.jp/hojin/choutatsu/medical/premium.html
開業融資を検討する際は、その銀行に医療専門の部署があるかどうかも重要なチェックポイントになります。
なぜ医療部門がある銀行が良いのか。
それは歯科医師信用組合と同様に「歯科経営の数字」への理解が深いからです。
ただ、行員はその部署だけ担当しているとも限らず、また、行員は数年単位で異動があるため、歯科だけ担当しているわけではありません。
この点で歯科の引き出しに物足りなさを感じる可能性も考えられます。
とはいえ、専門部署がない支店に飛び込みで相談に行って新人担当者にあたると、創業融資の一般的な枠組み(例えば上限3,000万円など)に当てはめられてしまう可能性があります。
しかし医療専門チームがあれば、歯科ユニットやCTなどの高額な医療機器が必要なことを理解しているため、1億円規模の融資にも理解を示してくれる可能性が高まります。
また、彼らは多くの歯科医院の決算書を見ています。
「このエリアでこのユニット数なら、これくらいの売上は見込めるはずだ」というベンチマークを持っているため、先生が作成した事業計画書の精度を客観的に評価してくれます。
これは、無理な返済計画を立ててしまうリスクを防ぐことにも繋がります。
先輩開業医の「生の声」は情報の宝庫
ネットやパンフレットだけでは決して分からないのが、金融機関の「本当の使い勝手」です。
ここで頼りになるのが、既に開業されている先輩歯科医師からのアドバイスです。
「あそこの銀行は、医療の話が分かる人が多い。」
「この信金は、経営が苦しい時に親身になって相談に乗ってくれた」
「紹介で行くと、金利交渉がスムーズに進んだ」
こうした生の情報は、何物にも代えがたい価値があります。
特に、銀行の担当者との「相性」は非常に重要です。
融資は借りて終わりではなく、そこから10年、20年という長い付き合いが始まります。
もし身近に信頼できる先輩がいれば、どこの金融機関から借りているか、その理由は何かをぜひ聞いてみてください。
また、紹介という形をとることで、銀行側も「既存の優良顧客からの紹介」として、より丁寧な対応をしてくれることが期待できます。
政府系金融機関(公庫・WAM)で「借入枠」を確保する
ここまで民間金融機関を中心にお話ししてきましたが、同時に必ず検討していただきたいのが、日本政策金融公庫や福祉医療機構(WAM)といった政府系金融機関です。
特に日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、無担保・無保証人で利用できる枠があり、開業時のリスクヘッジとして非常に強力です。
民間の銀行から満額を借りるのではなく、公庫で一部を借りておくことで、民間銀行側のリスクを分散させ、結果として融資全体の承認率を上げられることが期待できます。
また、福祉医療機構(WAM)は、医療機関への融資に特化した政府系機関で、非常に長期かつ固定金利での借入が可能です。
返済期間を長く設定できる傾向があるため、開業初期のキャッシュフローを安定させるのに適しています。
これらを組み合わせた「協調融資」という戦略をとってみてもいいでしょう。
まとめ:融資は一期一会
いかがでしたでしょうか。歯科の開業融資には、実はこれだけの選択肢とチェックポイントが存在します。
1.歯科医師会提携ローンの確認
2.自治体の制度融資と利子補給の調査
3.歯科医師信用組合の検討
4.医療専門部署を持つ銀行の選定
5.先輩開業医からの情報収集
これらを一つずつ丁寧に紐解いていくことで、単に「お金を借りる」以上の価値を手にすることができるはずです。
最後にお伝えしたいのは、融資を受けるということは、その金融機関と長い付き合いを想定しなければならないということです。
金利という数字も大切ですが、「この銀行と付き合っていきたいと思えるか」という直感も必要だと個人的には考えています。
先生の理想のクリニック作りが、最高の形でスタートできることを心より応援しています。

