【note】税理士のアタマの中

医療機器はリースか購入か〜資金調達戦略から考える最適な判断基準〜

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こんにちは、島田(つぶやきはこちら)です。

開業歯科医師の先生からよくいただく質問のひとつに、「CTや口腔内スキャナーを導入するなら、リースと購入どっちが得ですか?」というものがあります。

ほとんどの人はどちらが安い・高いの比較に留まってしまいがちですが、実はこのテーマは医院の資金調達戦略そのものに直結しています。

今回の記事でいちばん伝えたいのは、なぜリースか購入かが資金調達戦略に結びつくのか、というその理由です。

自己資金のみで安定的にキャッシュフローが回る事業形態ならそこまで深刻に考える必要はありません、

でも歯科医院は違います。

外部からの資金調達ありきで経営が成り立つ事業形態だからこそ、これからお話する視点は常に念頭に入れておいていただきたいのです。

税務面や実務的な判断軸も合わせてお伝えしますが、この資金調達戦略の勘所を掴むことを優先していただければと。

キャッシュフローが途絶えるとリースか購入かの次元の話ではなく、医院経営そのものに波及する事態になるからです。

ということで、

  1. 経営の資金調達戦略から考えるリース・購入の違い
  2. 税務面での扱いと優遇税制の注意点
  3. 医療機器の特性(陳腐化・更新周期)を踏まえた判断軸

を整理して、設備投資の出口戦略まで見据えた考え方をお伝えします。

目次

前提:リース取引と購入との比較のキホン

まずは、この二つの選択肢が、会計上、そして経営に違いを与えるのかを整理しておきましょう。

比較項目購入(自己資金・借入)リース
所有権歯科医院に帰属リース会社に帰属(所有権移転外リースの場合)
初期費用高額(全額または頭金が必要)低額
負債計上借入をした場合は借入金として負債計上される原則として負債計上されない(中小零細企業はオフバランスが一般的)
経費処理減価償却費として耐用年数にかけて費用化リース料を毎月全額費用化(賃貸借処理する場合)
固定資産税課税対象となるリース会社が負担(リース料に含まれる)

最も大きな違いは「所有権」と「初期のキャッシュアウト」です。

購入は自院の資産となる代わりに、初期に多額の資金流出を伴います。

一方、リースは所有権移転外リースなら所有権を持たない代わりに、初期の負担を抑え、月々の支払いに平準化できるという特徴があります。

「どちらが得か」ではなく「どうやって資金調達するか」で決める

支払総額ではなく融資余力をどう設計するか

まず結論からいうと、リースと購入(融資)の判断は「支払い総額の損得」ではなく、今後の資金調達余力をどう設計するかという話です。

どちらも外部から資金調達をしているという点は共通していますが、資金調達先がリースはリース会社から、借入は金融機関から、という違いがあるので。

ただ、リースのほうが支払い総額が高くなる傾向にあります。

利息だけではなく、償却資産税や保険料相当額も含まれていますからね、当然といえば当然ですが。

それでも、リースを選ぶ理由はシンプルです。
融資枠を温存できるからです

金融機関や保証協会の限度枠が開業資金や運転資金でほぼいっぱいのとき、リース契約は「別ルートの資金調達」として機能します。

今借入余裕枠があるのか、近い将来余裕枠を残しておかないといけない事業計画はあるのか、税金や保険料や処分費用をいつどれくらい払わないといけないのか。

ここの検討なしに手軽にリース、堅実に購入(借入)の温度感で決定してしまうのは御法度です


今の自己資金の残高、今後予定している増床、新ユニット導入、分院展開、設備の買い替えやリース契約の終了など、
将来の資金需要を見越して決めることが最も重要です。

そして、万が一に備えた資金調達先を温存しつつ、必要な時に融資を受け、手元資金を厚くすることができる点は大きな強みになります。

ちなみに、「購入=現金一括支払い」という誤解もよくありますが、実際には融資を活用すればリースと同じように支払いを分割できます。

銀行融資を利用して購入した場合、利息はリースより低く(絶対ではないですが)、総支払額を抑えながらキャッシュアウトを後ろ倒しにできますので。

つまり、リースも融資を利用した購入も資金のキャッシュアウトのタイミングを後ろにずらす手段としての機能を果たします。

税務の観点─節税効果と優遇税制の扱い

リースは毎月全額経費、購入は減価償却で経費

リースはリース料を経費計上するか、購入は会計のルールに則って減価償却費(取得価額を耐用年数にわたって経費化していくルール上の金額)を経費計上するかだけの違いで、トータルでみて節税にあまり影響はありません。

(ここでは、リースは原則的な売買処理ではなく、一般的に中小企業で認められている賃貸借処理をした場合を想定しています。会計基準の詳細な説明は割愛します。)

トータルでみて、といったのは、リース料の支払いのタイミングと減価償却費の計上時期とがずれれば、各期の経費計上額が違ってくるからです。

もちろん、リース料の総額のほうが購入の場合の減価償却費より高ければ、トータルの経費計上額は多くなります。

優遇税制の適用範囲─リースの種類に注意

医療機器の導入では、リース・購入いずれも中小企業投資促進税制などの優遇措置(特別償却または税額控除)の対象になり得ます。

ただし、ここで注意が必要でして。
リースのうち「所有権移転外リース」は、税額控除しか適用されず、特別償却は受けられません。

特別償却と税額控除のどちらが有利かはその期およびそこから数年間の損益状況によります。

優遇税制の選択肢がなく期待していた節税効果を得られなかった、ということにならないように、契約前にリース会社に所有権移転リースか、所有権移転リースか、確認しておくことをお勧めします。

医療機器の特性─陳腐化と更新周期から考える

「進化が早い機器」か「長く使う機器」かで判断が変わる

医療機器、とくにデジタル分野は技術の更新サイクルが早いのが特徴ですよね。

CT・口腔内スキャナー・CAD/CAMなどは数年スパンで新型が登場します(もっと頻度が高いかもしれません)。

電子カルテ等のソフトウェアも比較的短めの使用期間だと思います。

こうした機器は、耐用年数より契約期間が短いリースのほうが適合しています。

契約終了後に新機種へスムーズに乗り換えができ、処分費用も不要というメリットがあるので。

逆に、ユニットのように比較的長く使う設備は、購入したほうが結果的にコストを抑えられる可能性が高くなります。

長く使う機器をリースしていると、当初リース期間終了後も再リースするか買い取る必要が出てくるからです。

つまり、機器ごとに次のように整理できます👇

機器タイプ特徴向いている契約形態
CT・スキャナー・CAD/CAM技術進化が早い・陳腐化リスク高リース
ユニット・レントゲン長寿命・更新頻度低い購入
ソフトウェア一体型機器保守契約あり・アップデート頻繁リース(更新しやすい)

更新と財務計画をセットで考える

リースや保守の更新タイミングでのキャッシュアウトが読めないまま導入すると、後で「想定外の出費」が発生し、資金繰りを圧迫します。

リース満了後の再リース料、購入機器の処分費用、新機種導入時の頭金などをすべて“出口戦略”として見積もっておくことが重要です。

つまり、医療機器の導入判断は、「導入コスト」ではなく「ライフサイクルコスト」で考える、ということかなと。

更新・処分までを含めた時間軸の設計が、経営の安定に直結します。

まとめ:数字ではなく戦略で決める

医療機器のリースか購入かの問は、単なる支払い方法ではなく、資金調達戦略の一部です。

つまりその影響は短期的な節税効果や支払い総額の大小ではありません。

  • 今の自己資金をどう活かすか
  • 今後どんな投資を予定しているか
  • どんな財務状態を目指すか

この3点を軸に考えると、判断は自然と明確になります。

ということで、本日のまとめです。

  • 「リースか購入か」は“資金調達戦略”の選択
  • リースは融資余力を残す役割もある
  • 優遇税制はリースの場合、契約の種類で適用範囲が変わる
  • 医療機器の更新サイクルまで含めて財務設計を行う
https://mshimada-blog.com/tax-second-opinion/
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