こんにちは、島田です。
以前Threadsでこんなことを呟いたことがあります。
今後地方は医療不足が加速化していくのは明らかで、歯科医院も漏れなく集患には困らなくなる。
人口減が進み需要と供給の逆転現象が起きるまで。
でもなだれ込んでくる患者さんは他の医院から溢れた保険診療中心の患者さんばかり。
今後も日本の医療費は膨張し診療報酬の大幅な増加改定が見込めないなか、物価は上がるので、保険診療が増えれば増えるほど資金繰りは苦しくなる。
それに拍車をかけるように人材不足は加速し、患者数を裁き切れる人員を雇い入れることが難しくなる。
結果医院のフル稼働させることができないまま、お金と人が擦り減っていく。僕が見ているのはそんな世界線です。
こんな背景があるので、自費診療の割合を増やそうとする歯科医院さんは多いです。
僕は歯科医師ではないので、自由診療の良し悪し(増やす減らす)を語る資格はありません。
が、現実にその割合を増やす意思決定をせざるを得ない医院さんが多いことは現場のみなさんがよく理解されているかと思います。
本記事のポイントは、実は自費部門の強化は税額計算に大きな影響を与える、ということです。
ぜひ、今後の事業計画を念頭におきながら読み進めていただければと思います。
利益の大小とは関係ない税金の存在
自費率を上げる経営目的のひとつに、利益率を上げることがあると思います(それが全てではないにしろ)。
税金は利益が増えれば増える構造になっています。
逆に赤字だと税金は発生しません。
でもこれは所得税(医療法人であれば法人税)の話で、利益が発生しなくても支払う税金がいくつか存在します。
そのなかでもインパクトの大きい税金が消費税です。
医療と消費税の身近な関係でいうと、保険診療の売上には消費税はかかりません(専門用語で非課税取引といいます)。
いっぽうで自費診療や物販など、保険請求をしない売上には消費税が発生します(専門用語で課税取引といいます)
患者さんにお渡しする領収書に消費税が発生しているか印字されるはずなので、一度確認してみていただければと。
理解していただきたいのは、自費診療(課税取引)を増やすと預かる消費税が増え、納税額が増えるということです。
この原因は次のような消費税の計算方法の概念にあります。
消費税の納税額=預り消費税ー支払消費税
極端な話、自費診療の売上500万円(税抜)とそれに必要な人件費1,000万円が発生したとき、自費部門は赤字なので所得税や法人税、事業税はかかりません。
いっぽうで消費税は納税ポジションになります。
というも、預り消費税は、自費診療の売上500万円(税抜)に税率10%を乗じた50万円が発生しますが、人件費は消費税が発生しない費用なので、1,000万円を払っても支払消費税は発生しないからです。
結果として50万円の納税額になります。
(消費税が発生する経費があれば預り消費税から控除することができます。これに関しては後述します)。
これが利益がなくても納税が発生する消費税のメカニズムです。
繰り返しますが自費売上を上げれば上げるほど、その納税額は大きくなっていきます。
そこで難しくなるのは資金繰りです。
利益が出ないから税金はないと思い込んで手元資金を使ってしまうと、消費税の納税ができないということになりかねません。
消費税の納税額は事前に把握してプール(保留)しておくのが無難です。
自費率が増えるときに節税方法
ではなるべく納税額を圧縮できる方法はないのか。
これが今回の本題です。
先ほど、この計算式が消費税の概念と説明しました。
消費税の納税額=預り消費税ー支払消費税
お分かりのとおり、納税額を減らすためには、預り消費税を減らすか、支払消費税を増やすしかありません。
今回の場合は自費診療を増やしたときの節税策なので、支払消費税を増やすことに注力していくことになります。
ポイントの一つは支払消費税を計算する方法がいくつかあるということです。
前章の数値例では人件費は消費税が発生しない経費だと説明しましたが、消費税が発生する経費にかかる支払消費税を無駄なく取り込んでいく必要があります。
もう一つのポイントは、計算方法によっては概念とは違う部分があるということです。
実際に歯科医院が選択しうる消費税の計算方法は
- 簡易課税
- 原則課税(一括比例配分方式)
- 原則課税(個別対応方式)
です(厳密には2割特例もありますが、適用が少ないため割愛します)。
ここからは、具体的な数字を用いて各計算方法の比較をしていきます。
各計算方法の比較(自費用の設備投資をした場合)
例えば次のように前提を置きます。
- 売上総額2,000万円(税抜)、うち保険診療1,400万円(非課税)、うち自費診療600万円(税抜)
- 自費専用の設備機器の購入代金500万円(税抜)
- 上記より預り消費税は600万円×10%=60万円、支払消費税は500万円×10%=50万円
では早速税額シミュレーションをしていきましょう。
原則課税(個別対応方式)
原則課税(個別対応方式)はもっとも概念に近い計算方法です。
細かい規定の考慮はあるものの簡便的に説明すると、納税額の計算は預り消費税60万円ー支払消費税50万円=10万円となります。
考え方としては、自費診療で発生した売上にかかる預り消費税と、自費診療の設備機器の購入にかかる支払消費税は、一対の関係にあるので両者の残額で納税額を計算するという方法です。
原則課税(一括比例配分方式)
原則課税(一括比例配分方式)は、支払消費税を全額控除するのではなく、課税売上割合を乗じた金額を控除する方法です。
課税売上割合は歯科医院の場合、保険診療と自費診療の割合だと思っていただければと(厳密には物販売上等を加味する必要があります)。
今回の例の場合は、課税売上に該当する自費診療の割合は30%(600万円÷2,000万円)です。
つまり、納税額は預り消費税60万円ー支払消費税50万円×30%=45万円になります。
簡易課税
簡易課税はその名のとおり、もっとも簡単な計算方法です。
というのも、支払消費税の実額を無視するからです。
簡易課税では支払消費税をみなし仕入率という割合を預り消費税に乗じて計算します。
医業のみなし仕入率は50%なので、今回の例では、預り消費税60万円×50%が支払消費税になります。
よって納税額は預り消費税60万円ー預り消費税60万円×50%=30万円となります。
自費強化に有利な消費税の計算方法とは
上記のシミュレーションでは、それぞれの納税額が原則課税(個別対応方式)は10万円、原則課税(一括比例配分方式)では45万円、簡易課税では30万円という結果になりました。
つまり、自費診療を強化しようとして経費を使うなら、原則課税(個別対応方式)がいちばん有利なことがわかります。
これが本記事で伝えたいポイントの一つです。
また簡易課税はみなし仕入率を使うため、実際使った経費より多く支払消費税が計算されることがありますが、医療機器が高額になればなるほど原則課税(個別対応方式)が有利になるので、そういった投資計画がある場合には事前に顧問税理士と打ち合わせしておくことをおすすめします。
ただ注意点があります。
それは原則課税(個別対応方式)は経理処理が煩雑だということです。
ざっくり言ってしまうと、全てに経費について、自費診療のための費用なのか、保険診療のための費用なのか、どちらにも共通する費用なのかを判断する必要があります。
自然と顧問税理士との密なコミュニケーションをしていくことになります。
なお、今回の記事では原則課税や簡易課税の計算適用期間の縛りについては詳しくは触れていません。
自費に力を入れていこうとするフェーズでは、その前段階で費用対効果を考えながら、税務戦略を練るようにしましょう。


