後継者が事業承継をきっかけに新事業に取り組む、ということは良く見聞きします。そして、そのタイミングで、経営理念を見直したいと思っていらっしゃることが多いようです。
そこで今回は、特に事業承継をきっかけとする新事業と、経営理念の役割について考えていきます。
新事業を想定した経営理念はありか?
特に、既存事業が斜陽産業で業績が右肩下がりの場合、後継者が事業承継をきっかけに新事業に挑む、ということがあります。
このこと自体に問題はなく、むしろ事業承継後の積極的な取り組みは業績を好転させるということがわかっています。
今回考えていきたいのは、まだ実現していない事業を想定した経営理念を策定してもいいのか、ということです。言い換えれば、既存事業を無視して経営理念を策定してもいいのか、ともいえます。
というのも、後継者が考える新事業が既存事業と考え方が真逆ということがあります。その場合、心機一転のために新事業への挑戦と同時に経営理念を考え直したいという声をちらほらお聞きするということです。
このようなケースでの理念策定では、経営理念のなかでも、特にビジョン(中期的(3年~5年)な企業の目標や理想の姿)の策定で難しさを感じることが多いです。
どういうことかというと、後継者が先代社長から受け継いだ事業そのままに会社を発展させていきたい、という意向を持っている場合は、既存事業の延長線上でビジョンを描くことができます。
一方で、極端な話、後継者が既存事業からは徐々に撤退して新しい事業に転換したい、という意向を持っている場合は、ビジョンの主役は新事業であるはずなので、ビジョン策定を進めるうえで既存事業は蚊帳の外になってしまう傾向があります。
つまり、新事業を主軸にビジョンを策定すると、既存事業の延長線上で策定する場合に比べて、非現実的なビジョンが出来上がってしまうのではないか、という難しさがあるということです。
全ての戦略は理念起点だから問題ない
結論から言うと、既存事業を無視して、新事業を想定した経営理念を策定することは問題なく、ある意味理にかなってといるといえます。
ここで抑えておきたいのは、全ての戦略は経営理念ありきだということです。この点については、過去の記事をご参照いただければと思いますが、要は、理念を起点として戦略を立てることできるということをお伝えしています。
これを今回のようなケースで置き換えると、たとえ新事業を想定したビジョンを策定した場合であっても、新事業で何を実現するのか、いつ達成するのかが明確になり、結果的に、既存事業に関しても、とるべき戦略が見えてくるということです。
具体的には、既存事業から新事業にどういうペースで転換していくのか、そのための人的・資金的なリソースはどうやってやりくりしていくのか、従業員にはどう説明していくのか、という現実的な計画が立てられるということです。
つまり、新事業を想定した経営理念であっても、既存事業を無視していることにはならない、といえます。
そして何より、そもそもやりたい新事業を想定した経営理念でないと、本音ベースでの言語化はできません。あまりモチベーションが湧いていない既存事業を気にした経営理念では、建前上の言葉になってしまうということです。
以上から、既存事業を無視して、新事業を想定した経営理念を作ることは不自然なことではなく、むしろ結果的に既存事業の戦略、新事業の戦略の両方の土台になるといえます。
ちなみにですが、経営理念、とりわけビジョンを先に明確にしておくとことで既存事業への考え方が変わる場合もあります。数年後には完全に撤退しようと思っていたけれども、売り方を変えることでビジョン実現につながるということに気がつく、といったようなことです。
全ての戦略は経営理念ありき、というのはこのような事例からも分かるかと思います。
注意したいこと
この点、新事業を想定した経営理念ができたときに注意したいのは、既存事業から新事業への過渡期での対応です。というのも、この過渡期では、一見、掲げているビジョンとやっていることが一致していない可能性があるからです。
こういった場合、会社の外と内の両方の利害関係者に疑問を抱かせてしまうかもしれません。ここでいう会社の外とは、金融機関や取引先などのことであり、会社の内とは従業員やその家族のことを指します。
ですので、経営計画書を作成したり、社内で密にコミュニケーションをとったりして、こういった利害関係者に今後の計画を共有しておくことが重要になります。
まとめ
今回は、事業承継にあたって新事業に挑戦する場合の経営理念の役割についてお伝えしてきました。
事業承継を機会に会社を成長させたいと考えている後継者の方々の参考になれば幸いです。
◆編集後記
昨日の帰りは久しぶりに満員電車に遭遇しました。
新卒の方が入社された影響もあるのかと思いつつ、結局社会的にリモートワークは定着しなかったのかだろうなと感じています。
◆家トレ日記
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